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プロダクトマネジメントとプロジェクト推進|プロジェクト推進を考える会 Vol.2——ゲスト:及川卓也さん【イベントレポート】

2021年6月29日、トークイベント「プロジェクト推進を考える会」の第二回を開催しました。今回のテーマは「プロダクトマネジメントとプロジェクト推進」。製品開発プロジェクトの視点やそのプロセスを通して、これからのプロジェクト推進に必要となるヒントを探ります。

今回は、世界的に利用されているコンピュータのOSやグループウェアなど、さまざまなプロダクト開発に携わってこられたTably株式会社の代表・及川卓也さんをお迎えし、お話をうかがいました。

▼登壇者

及川 卓也氏(おいかわ・たくや)
Tably株式会社 代表取締役 Technology Enabler
東京出身。早稲田大学理工学部卒。専門だった探査工学に必要だったことからコンピュータサイエンスを学ぶ。卒業後は外資系コンピュータ企業にて、研究開発業務に従事。現在で言うグループウェア製品の開発や日本語入力アーキテクチャ整備などを行う。その後、数回の転職を経験。OSの開発、ネットワークやセキュリティ技術の標準化などにも携わる。プロダクトマネジメントとエンジニアリングマネジメントという製品開発において軸となる2つの役職を経験。2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。著書『ソフトウェア・ファースト~あらゆるビジネスを一変させる最強戦略~』(日経BP)、『プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで』(翔泳社)
https://tably.rocks/
菊地玄摩(きくちはるま)
ユニバ株式会社 代表取締役
2003年、有限会社ユニバースソフトウェア(現ユニバ株式会社)の創業メンバーとなる。2006年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術専攻修了。2009年よりユニバ株式会社代表取締役。ソフトウェア製品の開発プロジェクトや新規事業に参加し、アイディアの深堀(プローブ)と新しい体験の実装(プロトタイピング)を行なっている。コパイロツト社のプロジェクト・スプリント/スーパーグッドミーティングスプロジェクトには2016年から参加。
定金基(さだかね・もとい)
株式会社コパイロツト共同創業者/エグゼクティブプロジェクトマネージャー
プロジェクトオーナーサイドに立ち、外部パートナーとしてプロジェクトマネジメントのサポートを行う。Project Based Working 社会に向けて、プロジェクトマネジメントを常にアップデートしつづける構造を構築中。MITテクノロジーレビュー日本語版のエグゼクティブプロデューサーを務めるなど、様々な共同プロジェクトへパートナーとしても参画。

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本イベントは、プロジェクト推進をサポートするクラウドサービス「SuperGoodMeetings」の正式リリースを記念して開催しました。

リーダーチェンジによるプロジェクトの成功。真の要因は何か?

今回は、及川さんが印象に残っている体験としてお話くださった、とある製品開発プロジェクトの成功事例を軸にトークが展開していきました。1990年代末に進行していた、コンピュータOSの開発プロジェクトの事例です。

・社内で「ドリームチーム」と呼ばれるプロジェクトチームが立ち上がり、プロダクト開発を行うことになった。

・しかし開発期間が長引くにつれ、当然ながら社会状況が変化し、顧客の期待値も移り変わってしまい、プロジェクトは難航しはじめる。進行が遅れ、途中段階で入社した及川さんが、「まだこの段階なのか」と驚いたほどだった。

・当初からプロジェクトを率いていたリーダーは人格者で、優秀な人だった。しかしあるときテコ入れが行われ、開発のトップが若手のリーダーに変わった。

・リーダーが変わった途端にプロジェクトが一気に加速し、プロダクト完成にこぎつけることができた。

このケースにおける「リーダーの交代」という象徴的なできごとは、プロジェクトにどのような変化をもたらしたのでしょうか。また、そこまで大きな影響を及ぼすことができた要因はなんだったのでしょうか。

一点だけ、前提として抑えておきたいポイントは、両リーダーとも優秀で開発トップとしての技術や素養を兼ね備えており、どちらかの能力が極端に欠けていたわけではない、ということです。

このテーマについて行われた3人のディスカッションから、以下3つの要素を抽出してご紹介します。

1)「リーダーの交代」という事実そのものが最大のインパクトをもたらした?
2)明確なビジョンの存在に、全員がエンパワメントされた
3)チームメンバーの自律性が生まれ、プロジェクトが「自分ごと化」された

ポイント1:「リーダー交代」という事実そのものが最大のインパクトをもたらした?

「両リーダーとも優秀だった」という前提を踏まえ、及川さんがご自身の仮説として話してくれたのが、リーダー交代という"大きな変化”そのものが、プロジェクト推進のスイッチを入れたのではないか、ということ。

「誰がリーダーになるか」「どんなリーダーシップを取るか」も、もちろん重要です。ただこのケースでは、長期化していたプロジェクトに対してインパクトの大きい変化がもたらされたことが、チームを刺激してプラスに作用したとも考えられます。

リーダーを交代するなど大きな意思決定の他にも、停滞するプロジェクトを進めるために変えられることはいろいろあります。以下は、コパイロツトが実際に行うことがある施策として挙げられた例です。

・チームの規模を変える:一旦、チームの人数を必要最低限に絞って仕切り直す
・意見を集約し直す:チームメンバーと1on1を行い、改めて意見を募り集約していく
・目的に立ち返る:そもそもの目的について、改めて適しているか議論する

「停滞しているプロジェクトに、変化や刺激をもたらす」という観点からみると、他にもいろいろ手段はありそうですね。

ポイント2:明確なビジョンの存在に、全員がエンパワーメントされた

もう一つ、プロジェクトの立て直しに成功した背景には、明確なビジョンの存在があったそうです。当然ながら、単なる言葉としてのビジョンだけが掲げられていても、チームメンバーにその意義まで浸透しなければ意味がありません。メンバー全員が、「このプロダクトを作り上げたら、世の中が変わる」と思えていたかどうか。

今回のケースでは、交代した後のリーダーが「ビジョンの浸透」を重視し、自分自身の役割をしっかり認識して行動していたといいます。掲げられたビジョンを、メッセージとしてしっかりチームメンバーに伝わるまで伝え続けたことが、成功につながったのでしょう。

ポイント3:チームメンバーの自律性が生まれ、プロジェクトが「自分ごと化」された

プロジェクトに大きな変化が生まれて刺激され、改めて明確なビジョン、芯の通った方針が打ち出されて、それにメンバー全員がエンパワーメントされたことによって、プロジェクトチーム内に自律的な動きが生まれはじめたといいます。

停滞していた時期は、どこか自分ごとになっていない、自主的な行動が生まれない空気があったそうですが、プロジェクト内にさまざまな変化が生じたことによって、個々の自律性が発揮されるようになりました。

どんなにトップダウン型の組織、プロジェクトであっても、「チームメンバー全員をマイクロマネジメントすることは不可能」と、及川さんは言います。定金も、空気感やカルチャー、仕組みを生み出し、コントロールできる人が一部のメンバーに閉じてしまっているプロジェクトチームはどうしても弱くなると指摘していました。

携わるメンバーそれぞれが「自分ごと」として参加できていることが、プロジェクトを推進する何よりのエンジンになるのでしょう。

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メンバーが自律的に行動できる環境をつくるには

及川さんのお話をうかがう中で改めて感じたのは、プロジェクトの目的を全員ときちんと共有し、各自が納得したうえで、目的や掲げられたビジョンに常に立ち返りながらプロジェクトを進めていくという、プロジェクト推進の基本です。

その「基本」を一つひとつ着実に進めていくための一助になればと考え、コパイロツトでは定例ミーティングを効果的に進行するためのクラウドサービス「SuperGoodMeetings」を開発し、6/1に正式にリリースいたしました。

チームメンバーとのビジョン共有をはじめ、プロジェクト推進に課題を感じている方のためのサービスです。まずは1プロジェクト(無料)から、ぜひ一度お試しください。


●「プロジェクト推進を考える会」とは?
株式会社コパイロツトは創業以来「プロジェクト推進」に最大の関心を持ち、事業や独自の研究を続けています。これからさらに多様化/複雑化する社会に向けて「プロジェクトを推進させる」という考え方とスキルは重要になっていくと考えています。そこで、本勉強会では有識者の方との対話を通して以下の実現を目標としています。
・「プロジェクト」という概念を広く捉えて、時代に合わせた意味付けをする。
・「プロジェクトを推進させる」という考え方を定着させて、できる人を増やす。
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