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球面万華鏡と正多面体

正多面体を,球面万華鏡に対応させて考えることができます.Oを中心とした正多面体Mがあったとします.Aは正多面体のある面の中心,Bはその面の辺の中点,Cはその辺に属する2つの頂点のいずれかとします.頂点Oから発し,点A, B, Cをそれぞれ通過する辺が作る3角錐Kを,正多面体Mの基本錐と名付けます(図の場合は,立方体Mの例).

面とその辺とその辺に属する頂点の選び方を変えれば,正多面体Mの様々な基本錐ができますが,それらは重なり合うことなく,空間全体を覆っています.基本錐の数Nは,以下のいずれかの計算で求めることができます.
N=2pG=4P=2qB
ここで,Gは多面体Mの面の数,Pはその辺の数,Bはその頂点の数,pは各面の辺の数,qは各頂点に集まる辺の数です.

したがって,立方体の場合は
G=6, P=12, B=8, p=4, q=3, N=48となります.

基本錐の面は,正多面体Mの対称面であり,共通の面を持つ2つの基本錐は,その共通平面に関して対称となります.例えば,立方体の場合,基本錐Kと基本錐K′は対称です.

基本錐KのエッジOAは,2p個の基本錐に共通なエッジです.したがって,エッジOAにおける基本錐Kの二面角はπ/pとなります.同様に,エッジOBの二面角はπ/2,エッジOCの二面角はπ/qであることが確認できます.したがって,任意の基本錐と正多面体Mの同心球面との交点は,鋭角π/pとπ/qを持つ直角球面三角形となります.こうして,球面万華鏡を作ることができます.

正多面体から球面万華鏡に移行するとき,基本錐のどの辺が面の中心を通り,どの辺が正多面体Mの頂点を通過するかの情報は失われます.もし,頂点が正多面体Mの面の中心となる正多面体M′を考えると,同じ球体万華鏡が対応します.このような正多面体MとM′は,互いに双対と呼ばれます.例えば,立方体は正八面体と双対です.正四面体は,自分自身に双対です.MからM′に移るには,数字のpとq,GとBを入れ替えます.

球面三角形で1/p+1/q+1/r>1を解いて,p,q≧3 の (p, q, r)の整数解を求める.
求めた(2, 3, 3), (2, 3, 4), (2, 3, 5)は,それぞれ,正4面体,立方体と正8面体,正12面体と正20面体に対応します.

球面三角形の面積は,その角の和からπを引いた値に等しいことが知られています.特に,鋭角π/pとπ/qとπ/2の直角球面三角形の面積は,(1/p + 1/q - 1/2)πになります.球の全表面は4πなので,ここから数Nの別の公式が導かれます:

N=4/(1/p+1/q+1/2)

n次元正多面体と(n - 1)次元球体上の万華鏡にも同様の関係があります.面白いことに,3次元空間では5つの正多面体がありますが,4次元空間では6つ,n>4のn次元空間では3つの正多面体(4面体,立方体,8面体の類似体)しかありません.

引用:
E. B. Vinberg, published in the "Soros Educational Journal" (1997, No. 2)
«КВАНТ» No6, 2020


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