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CT(竹組織の観察)

■竹組織には,いろいろなサイズの組織が分布し配向もある.高分解能μCTの研究には面白い試料である.組織のサイズに分布があることは,CT実験前のX線小角散乱の実験からも示唆された.竹の主たる構成元素はC(特に竹炭はCのみ)なので,生体観察(有機物)の良いファントムになる.
竹を構成するCで吸収コントラストを得るには,使用するX線光子のエネルギーは,無機材料の場合に比べかなり低く10keV以下が良いようである.すなわち,C[密度≒1]の減衰長[μm]と光子エネルギー[eV]を考察すると,減衰長が9500μmになる(1mm厚の竹試料の透過率が90%)光子エネルギーを読めば,10keV近傍であることがわかる.CTの光源には,タングステンWターゲットから出る連続(白色)X線を用いる.単色光より白色光を用いる方が複雑・微細な分布組織のCTには有利と考える.
竹の節部隔壁は,あまり知られていないようで,節部の膜状表面や気孔の構造は竹の研究でも興味をもたれている.

■実験

装置: Tohken-SkyScan2011(東研X線検査株式会社)の協力を得て実施した.この装置は,光源サイズ(Wターゲット上)が0.3μmと微小であるのが特徴[この装置光源は,0.15μmの仕様値で,実験した2011年時点の最高]であった.励起電力は40keV×200μA,検出器はCCDカメラ(蛍光体+イメージインテンシファイア付),PixelSizeは9.74μm.
全回転角180deg以上をカバーする投影像232枚(回転角ステップ⊿θ=0.8deg)の測定を行う.
断面の再構成は:コーン・ビーム再構成法(Feldkamp方式),位相コントラスト増幅技術を考慮した再構成ソフトウエア NRecon,ver1.4.2(3)を使用した.

■解析

投影像や再構成した断面画像中の注目部位(512×512)を8bitのビットマップ形式で切り出し,2次元FFTを計算する.FFT結果は,振幅(利得)と位
相で表現される複素数の(512×512)配列であるので,振幅のみをビットマップに表示した.これは,一般にはパワー・スペクトル像と呼ばれるものであるが,振幅の2乗は,実験で観測されるX線回折強度像でもあり,構造の自己相関関数[Patterson関数]と等価である.従って,パワー・スペクトル像から,相関距離[組織の大きさ]がわかる.例えば,1pixelが3.35μmの場合,512pixel領域で,1/(3.35×512)=0.6×10^-3μm^- 1がFourier像のサンプル間隔で,Fourier像が中心値から46pixel位置にピークを持つとしたら,1/(0.6× 10^- 3×46) = 37μmの相関距離と見積もることができる.

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Fig.2 パワー・スペクトルのライン・プロファイル(HorizontalとVrtical)
中心を通る15pixel幅の帯(HorizontalとVertical)で,それぞれ帯幅の分を投影し得たラインプロファイル:
BlueMark:Horizontalプロファイル,RedMark:Verticalプロファイル
46pixelに明瞭なピーク.これは前述のごとく相関距離37μmに相当する.
Verticalの方がHorizontalより,ピーク位置が内側にある.つまり,Verticalの方が,Horizontalより,セルの平均組織がわずかに大きかった.
(隔壁部の解析については略)

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