pcr検査から罹患数を見積もる
前回の推定は1年間の時点でしたので,今回は,東京都(3月15日)のデータを用いることにします.罹患者を推定したのですが,罹患者とは何かの定義が難しい.ここでは,発症したもの(あるいは,入院+宿泊+自宅待機+調整中)を罹患者と仮の定義にしようとしましたが,色々疑問があります.検査陽性者のすべてが,タイムラグのあるものの罹患者になるのだろうか.実用的には,罹患者は感染力のあるものと限定したいのだが,そのような定義はとても難しい.従って,今回も以前のように,PCR検査の陽性者とほぼ同義とした(タイムラグがあり,平均期間が異なる).PCR検査の感度と特異度を仮定して,PCR検査の陽性率から罹患率の推定を行った.現時点でのPCR検査の陽性率は3.5%で,罹患率も同程度であると仮定した.
対象は,未知の全体の中にあるサンプリングされたPCR検査数の集合です.PCR検査を受けるには限定条件がありますから,一般の全体集合より,この集合の陽性率は多少高めであることは予想できます.PCR検査を受けた集合に対して,以下の確率を定義し計算します.
陽性判定+が出たときに,患者と確定できる確率:
p(罹患|+)=p(+|罹患)p(罹患)/p(+)
陰性判定ーが出たときに,実は患者である(偽陰性)確率:
p(患者|-)=p(-|患者)p(患者)/p(-)
PCR検査の特性は,前回と同じ以下の表を用います:
結論
推定される罹患者の内訳に存在する偽陰性は,陽性率3.5%の時点で,医療崩壊を起こすほどではありません.陽性率3.5%の現状の,PCR検査陽性+で,罹患者と確定できる確率は71%,PCR検査陰性ーで見逃す罹患者(偽陰性)の確率は1%です.
国家組織は統計データを疫学的に利用するわけで,個人固人の医療として見る視点と異なります.個人は非人格的な正規分布の1点に帰着してしまいます.現在,PCR検査と抗原検査が実施されていますが,医師が必要とするすべての数の検査に対応できるようにこれらを拡充すべきです.しかし,このところPCR検査で陰性となるフランスの変異株が広がっているようなので,PCR検査では対応できない局面が近づいています.
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