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ガリレオ温度計液体柱の密度変化

3月30日のKe-i'sさんの以下の記事を読み,私もガリレオ温度計が欲しくなりまねして購入しました.なかなか美しく見飽きません.面白い動作をします.

液体の密度はその温度に対応した値になります.温度が上昇すれば,液体は膨張し密度は下がります.例えば,
写真の左の状態ではすべての浮きが浮いており16℃以下の測定範囲外です.右の状態は16℃の浮きが沈んでおり18℃であることがわかります.部屋にあるデジタル温度計の数値とも一致しなかなか正確(2℃刻み)にできています.浮き子作りは,その体積に見合った量の溶液を詰めて封じるというガラス職人の難しい技がいるのでしょう.

ある時偶然に,浮きが液体の上にも下にも動かず,液体の中間に留まっているのを見つけました.それまで気が付きませんでしたが,考えてみればこれは当然起こり得ることです.浮きが留まっている点の液体の密度と浮きの密度がその位置で等しく,その位置より上の液体の密度は軽く.その位置より下の液体の密度は重い状態です.温度が一定の環境でも,液体柱には深さ方向に密度勾配ができているはずです.

その理由を考えるに,容器全体がある一定の温度にあり,液体は一定の温度であったとしても,液体の表面近くと液体の下部では液体密度は異なります.液体柱のある位置の密度は,その位置より上に乗った液体柱の重量だけ圧力が加わり圧縮されます.つまり,液体下部ほど液体の密度が高いはずです.この密度変化はどのようなものかを計算してみましょう.用いられている液体(パラフィンオイルらしい)の密度$${\rho}$$や圧縮率$${\kappa}$$の数値は分かりませんので,数式のままの結果で終えます:

$${g\displaystyle \int_{0}^{X}\rho (x)dx=\displaystyle \frac{1}{\kappa }\displaystyle \frac{(\rho (X)-\rho _{0})}{\rho _{0}}}$$

$${\displaystyle \int_{0}^{X}\rho (x)dx=\displaystyle \frac{1}{g\kappa \rho _{0}}\rho (X)-\displaystyle \frac{1}{g\kappa }}$$

$${\rho (X)=\displaystyle \frac{1}{g\kappa \rho _{0}}\rho '(X)}$$,すなわち, $${\rho '(X)=(g\kappa \rho _{0})\rho (X)}$$を解くことになります.この解は

$${\rho (X)=Ae^{(g\kappa \rho _{0})X}}$$ であるから,

$${\rho (0)=\rho _{0}}$$を考慮して,$${\rho (X)=\rho _{0}e^{(g\kappa \rho _{0})X}}$$が得られます.

液体の内部に入ると,液体の密度は,深さの指数関数で増加することがわかります.


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