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凸5角形によるタイル張り4種を発見した主婦マジョリー・ライス


平面張り詰めができる凸5角形タイルの形は,フランスの数学者マイケル・ラオがコンピュータを使い,全部で15種類を数え上げ(2017)決着したようです.このような数え上げの問題が難しいのは,演繹的な数学が使えないからです.
 米国サンディエゴの主婦マジョリー・ライスが,タイル張りの問題を知ったのは,1975年のScientific American 誌のマーチン・ガードナーのコラムでした.平面のタイル張り,別の言い方をすれば,一つのタイルで平面を分割する(テッセレーション)問題です.
 平面のタイル張りは,任意の3角形,任意の4角形タイルで可能,凸7角形以上では不可能です.凸6角形の場合は,全部で3タイプのタイル形で可能なことをラインハルトが証明しました(1918).残されたのは凸5角形の場合で,1975年のガードナーのコラムには,ラインハルトの5タイプと1967年にカーシュナーが発見した3タイプの計8タイプが掲載されていました.ところが新しいタイプがまだあったのです.
 マージョリ(フロリダ州生まれ)が,高等学校で数学を学んだのは1年だけでした.
1945年,結婚しワシントンD.C. に移り,幼い息子と一緒に,その地で商業デザイナーとして働き,後にサンディエゴに移住します.数学が楽しみで,黄金比とピラミッドに魅了されていたといいます.子どもたちが学校に通っている間に自分も読めるようにと,息子達にScientific American の定期購読を許しました.
 この問題では,5角形タイルのタイプ分けがとても難しい.連続変形によりどちらのタイプにも属するタイルがあるし,同じタイプでも出来上がったパターンが全く違うように見えたりもします.彼女は発見に驚き喜んで,自分の仕事をガードナーに送りました.ガードナーはそれをペンシルバニア州のモラヴィアン・カレッジのタイリング問題の専門家であるドリス・シャトシュナイダーに送ってくれました.シャトシュナイダーは,彼女の発見が正しいことを確認したのです.彼女は,張り詰め可能な4つの新しい凸五角形タイプと,それらによるほぼ60種類のテッセレーションを発見しました(1977).1975年以降にマジョリーの4種を含む計7種が発見されていま
す.最後に発見(2015) された15番目は,やはり周期的なものですが,単位胞が12個の5角形で構成される大きなもので,発見にスーパーコンピュータが使われました.
マジョリーは2017年7月2日94歳で亡くなりました.認知症のため,5角形タイリングの問題がついに完結したのを知ることはありませんでした.ワシントンにある数学協会のロビーの床タイルに,彼女の発見した5角形テッセレーションの1つ(エッシャー風の絵)が見られるといいます.

マジョリー・ライスについては,Natalie Wolchover の記事
(Quantamagazine, 2017)
https://www.quantamagazine.org/marjorie-rices-secret-pentagons-20170711/
をご覧ください.
注) 凸5角形タイルの非周期タイル張りに関しては,3回以上の任意の回転対称のものが作れることが知られています.

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