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ロバチェフスキー平面の紙モデル

А. Панов, Д. Ал. Панов (kvantik,2018年5,6月より )
原著は冗長なので,主旨は変らぬよう留意しつつ,全文書きかえました.

注)ロバチェフスキーは双曲幾何学の生みの親です.ロバチェフスキー(1829),ボヤイ(1832)の研究はそれぞれ独立になされました.

1978年のKvantikに,マチヤセビッチが1つ記事を載せ,アメリカの建築家フレッド・バセッティによって発明された多面体構成キットについて語っています.このキットの助けを借りて,双曲幾何平面の紙モデルを組み立ててロバチェフスキー平面に慣れましょう.Fred Bassetti(1917-2013)は,アメリカの有名な建築家で,彼のデザインに基づいて多くの美しい建物が建てられました.このキットは,彼が1961年に特許を取得し,「Flexagons」という名前で販売されました.https://patents.google.com/patent/US3003260

Flexagonsというのは,1辺12.5cm程度の正3角形の面の部品で,輪ゴムをかけて繋げるようにエッジがあります.下図の右端の部品が完成図で,この部品を厚紙でたくさん作ります.

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その使い方は,下図の例を見てください.面の数が増えると,表面の変動歪が大きくなり,3次元空間に完全には安定に収まらないことがすでに明らかです.実際のロバチェフスキー平面も同じ特性を持ち,3次元空間には配置できません.これはヒルベルトの有名な定理です.

組み立て方の例:

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繋いだ平面に直線を引くには,繋いだ面同士を平らにして(局所的にユークリッド平面にして)次々に隣の面に線の延長をします.

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↑上図の下半分平面に描かれた3角形の内角の和は180°ですが,上半分に描かれた3角形の内角の和は120°です.

■この紙モデルを使って,曲率が変化する平面で平行線を実際に描き,ロバチェフスキー平面などにも慣れましょう.

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↑この平面では,平行線は開いています.

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↑この平面の平行線が描かれている部分は,ユークリッド平面なので,普通の平行線になります.

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↑この複雑な平面では,直線外の1点を通りその直線に平行な直線が2本引けます.

■最初の部分で述べたように,ヒルベルトの定理によれば,ロバチェフスキー平面は3次元空間に配置できません. 同じように,球または半球を通常の平面上に配置することはできません.それにもかかわらず,ステレオ投影の地図を作れます.これを用い簡単な学校の数学で,さまざまな地球上のポイント間の距離を計算できます.

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同様に,ロバチェフスキー平面の注目すべき地図(=ポアンカレ円盤)があります.ポアンカレ円盤では,直線は円盤の縁で垂交する円弧です.

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正3角形が頂点で6つづつ集まり広がっているのが,ユークリッド平面ですが,ロバチェフスキー平面では,7つづつ集まって広がる平面が作れます.この平面をポアンカレ円盤モデルに作ったものが,以下の図です.

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一見すると,すべての正3角形の辺の長さが等しいようには見えませんが,
ポアンカレ円盤内の距離の計算(直線の定義)では,すべての正3角形が同じ大きさです.

この図は正7角形と正6角形で張り詰めた,ロバチェフスキー(双曲幾何)平面です.

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