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結晶と生物の対称性の比較●対称類の座標表記と非座標表記

結晶の対称性と生物の対称性を比較すると,興味深い結果が得られます.
すでに述べたように,結晶(自形のみを考慮している)では,無限回までの対称軸のうち,1, 2, 3, 4, 6の位数のものしか存在できません.*)
この要請のために,特異点を持つ図形の対称類は無限にありますが,結晶では32個しか存在しません.この32個の記号を,図Aで用いたのと同じ順序で表1に示します.

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表1

私たちが様々な対称類に使用した表記法は,「非座標系」と呼びます.
これは生成元(対称面と対称軸)の相互の向きだけが対応する記号で示されているからです.
結晶学的な軸のシステムa, b, c (斜交,あるいは直交)を導入し,座標軸,あるいは,座標軸が対称的に等価である場合には,その二等分線に対し,特定の方法で対称要素に関連付けると,対称類の記号は,「座標」方式で標記できます.これが,いわゆる国際命名法です.

そこでは,回映軸は等価な回反軸に置き換えられます.相対的な向きを表示する唯一の記号は,ーで,これは,対称軸と対称面が互いに直交することを表します.
国際的な命名法と,対称類のステレオ投影図(図A)を比較すると,軸a,b,cが,図面に対してどのように配置されているか,また,どの軸や二等分線が,対称類の記号に現れる対称軸や対称面の垂線と一致するのかを知ることができます.

対称軸の配置の詳細は図149と211,および,結晶学の専門書に記載されています.

注*)人工的な面(カット研磨面)を持つ結晶から作られた宝石には,5回軸,7回軸,8回軸などの対称性の外形が作られることがあります.
このような対称性は,結晶の内部の原子構造とは一致せず,結晶の物理特性を研究する上で全く意味がありません.

結晶の外観ではなく,結晶の他の特性,例えば,弾性,電気伝導,焦電性などを考察する場合,これらの特性に関する結晶の対称類の数は,全く異なるものになります.結晶の弾性特性の対称性は,合計8つの対称類で網羅され,焦電特性の対称類は10というように異なります.

結晶のある特性については,極限対称類(図Aの最後の行にある記号)が重要な役割を果たします.例えば,光学特性に関しては,岩塩は,球対称の~∞/∞に属しますが,外形は~6/4に属します.

しかし,現在に至るまで,考察している系(1,2,3,4,6,∞)とは別に,5回や7回などの他の位数の軸対称を持つ結晶特性は発見されていない.結晶学で培われた理論的考察によると,そのような性質は存在しないと考えられます.

生物については,どの対称類が生物の存在に適合するのかしないのかを示す理論はまだありません.
同時に,生物の代表的なものの中には,固体で結晶化した無生物には不可能な対称類(5回軸をもつ)に遭遇するという,驚くべき事実を再度指摘しないわけにはいかない.

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図A

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