フィボナッチ準結晶
■ 1次元フィボナッチ準結晶
2種類の長さの線分 L(長)とS(短), L/S =(√5+1)/2 (L/Sの長さの比は黄金比1.618・・・・)を用いて,1次元のタイル張りを実施する.
このタイリングのインフレーション・ルールを (L,S)→(LS,L) とすると,1次元のフィボナッチ準結晶が作れる:
つまり;LS→LSL→LSLLS→LSLLSLSL→LSLLSLSLLSLLS→・・・・・
という具合に無限に繰り返すことで得られる文字列である.
n回繰り返した後のLの数を$${x_{n}}$$,Sの数を$${y_{n}}$$,n+1回繰り返し後のLの数を$${x_{n+1}}$$,Sの数を$${y_{n+1}}$$とすると,
$${ \begin{pmatrix} x_{n+1}\\y_{n+1} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 1\\ 1 & 0\\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x_{n}\\ y_{n} \end{pmatrix} }$$
● この文字列には,隣接するSSやLLLなどは生じない.
証明してください:
Sが生じる原因はL(L→LS)にあるが,Sが生じるときはLSの形でLとSがペアで生じます.従って,Sの間に必ずLが挟まれ,SSの型は生じません.
LLの型はあり得ますが,これを生じる原因はSL(SL→LLS)しかあり得ません.LLLSを得るにはこの原因がSSLである必要がありますが,SSとなることはあり得ないので,結局,LLLの型は生じません.
● Lの個数/Sの個数=黄金比1.618・・・・(n→∞)
証明してください:
結局,$${\begin{pmatrix} 1 & 1\\ 1 & 0\\ \end{pmatrix}^{n}=\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12}\\ a_{21} & a_{22}\\ \end{pmatrix} }$$ を計算することになるが,行列の各項$${a_{11}(n), a_{12}(n), a_{21}(n), a_{22}(n)}$$は,フィボナッチ数列になり,$${a_{11}}$$に対して,$${a_{12}}$$および$${a_{21}}$$は1項遅れ,$${a_{22}}$$は2項遅れである.今必要なLの数/Sの数の比は,$${a_{11}/a_{21}}$$であり,この比は$${n→\infty}$$で黄金比1.618・・・である.
PenroseタイリングとFibonacci準結晶は密接な関係がある:PenroseタイリングのAmmannバーは,5つの平行な部分集合(それぞれは正5角形の辺に平行)に分類され,これらの部分集合のそれぞれは,1次元のFibonacci準結晶を作る.以下の図に赤線で示した平行線群は,一つAmmannバー部分集合で,この平行線群のAmmannバーの間隔は,L(広い),S(狭い)の2種類あり,L,Sの配列は1次元のFibonacci準結晶になっている.
1次元Fibonacci準結晶で,Lを数字の1,Sを数字の0に置き換えることで,無限に続くビット列として表すことができる.インフレーション・ルールは次のようになる: (1, 0) → (10, 1)
全域的には不等価(変換によって関連づけられない)だが,局所的には識別不能,つまり,回復可能なビット列$${F}$$は無限に存在する:
● ビット列$${F}$$の任意の有限部分列は,他の任意のビット列$${F′}$$にも現れ,出現する異なる有限部分列の相対頻度も一致する.
● 有限領域$${K}$$内の$${F}$$の任意の有限部分列は,$${F}$$の残りから復元できる.$${F}$$の任意の有限部分列(有限領域$${K}$$内)は,$${F}$$が特異な場合を除き,$${F}$$の残部(補空間領域$${K^c}$$内)から復元できる.
したがって,これらのビット列を利用して,離散多体波動関数を構成することができる.これらの波動関数は,QECCに対する基底になる.ビット列$${[F]}$$の各同値類に対して次のような波動関数が作れる:
$${|Ψ_{[𝐹]}⟩∝Σ_{𝑥=−∞}^∞|𝑥+𝐹⟩}$$
ここで,$${𝑥+𝐹}$$は$${𝐹}$$の$${𝑥}$$だけの並進である.
これは 整数格子上の量子スピン鎖の波動関数と考えることができる.これらの量子状態$${\{|Ψ_{[𝐹]}⟩\}}$$は,QECCのコード部分空間$${C}$$を張る.
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