ロッド(棒)の対称性
図形のカテゴリー別にその対称性を調べるには,図形の対称操作で不変である「特異点」,「特異平面」,「特異軸」などを要請して,この要請を満足する「対称操作」の集合を,その図形の対称類とした.
有限図形の1点を特異点とするのが「点群」,1次元の並進軸や,2次元の並進軸をもつ「1次元空間群」,「2次元空間群」も作れる.
周期的図形であるが,特異平面を持つという要請を捨て,特異軸の存在要請を残した図形のカテゴリーは,ロッド(棒)のタイプである.
特異軸は,ロッドの軸で,このカテゴリーの図形の対称性には,並進軸の他に,単純回転,映進,任意位数のらせん軸がある.
ロッドのカテゴリーには,チューブ,ネジ,鎖,編まれた紐,コード,ビーズ紐,植物の茎,光線(偏光,非偏光),音波,種々の力線,数学のベクトルやテンソル(狭義の),等々がある.
■スクリュー対称軸の整合と非整合
ある有限図形が,回転軸に沿って角度αの回転と距離tの平行移動という2つの連続した(あるいは同時に起こる)操作の後に,始めの図形と完全に一致するなら,その図形は「スクリュー対称軸(あるいはらせん対称軸)がある」と言います.
ロッドの場合,角度αは必ずしも360°を整数で割ったものに等しい必要はないのだが,もしそのような場合は,α=360°/n,(n:整数は,らせん軸の位数という).
例えば,このα=60°なら,らせん軸の位数は6で,6回らせん軸:6_{1}, 6_{5},これはねじの回転の向きに右回転と左回転に対応する.
ただし,位数2の場合のみ(あるいは,位数2のらせん軸を含むらせん軸),右手と左手の違いはない.
らせん軸の移動距離tは,a軸にそっての単位並進(格子定数)aとは別物なので,混同のないように注意せよ.特別な場合を考えると,αが1回転のときt=aとなる.周期的な結晶空間では,らせん軸は,2回,3回,4回,6回に限定されるが,ここでは,α→0,t→0の極限での「らせん軸」を導入する.これを,∞で表し,左回転と右回転の2種類の極限がある.