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グラス内の液体を推理する

写真の2つのグラス(リュミナルク製)は同じもので,表面模様は,小円(実際は凹レンズ)がたくさん並んでいるデザインです.こちら側の模様の小円の内に,向こう側の小円の模様が縮小されて映し出しされており,あたかもアポロニウスの窓を思わせるデザインです.
でもよく見ると,AのグラスとBのグラスでは感じが違うようです.
(問1)どこの違いに着目しますか,2か所つ見つけてください.
(問2)なぜこのように違って見えているのでしょうか?
(問3)グラスA内の液体の屈折率を推理しましょう.

A                             B

Aのグラスでは,こちらの壁面の1つの小円内に,向こうの壁面の小円の像が平均3個くらい見えていますが,Bのグラスでは,平均5個くらい見えています.したがって,Aの凹レンズとBの凹レンズの縮小率は$${\sqrt{5/3}≒1.3}$$倍くらい違います.グラス壁の凹レンズは,AのグラスでもBのグラスでも同じものですから,この違いはグラスに内にある媒質の屈折率の違いによると言わざるを得ません.
空気の屈折率を1とすると,水の屈折率は1.3ですので,ガラス(屈折率1.5)壁のレンズに接して空気がある場合の焦点距離を1とすれば,水がある場合の焦点距離は1.3となります.結局,グラス内が空気である場合に比べて,水が入っている場合には,レンズの屈折効果が弱められて,水が入っている場合の凹レンズによる虚像は空気の場合ほど縮小されません.
観測した,Aの像のサイズ:Bの像のサイズ=1.3 : 1ですので,この比率はちょうど水と空気の屈折率比と一致します.A内は水,B内は空気があると推理します.
(注)空気の屈折率を1とすると,水の屈折率1.3,グラスの屈折率1.5程度です.(グラスの屈折率はここでは用いません)

もう一つの着目点である水の表面の違いに気づいた方もおられるでしょう.
グラスAでは,光は水表面から空気に出る点で屈折し,さらに,グラスの縁を乗り越えて観測者に達します.光の直進では見えないはずのグラス内の深所(向こうの壁の模様が上から3段くらいまで見える)まで見えますので,グラスAには空気でなく水などが入っていると予想できます.水面に光が出てから,観測者の目に入るには,グラスの縁を乗り越える必要があります.観測者の目に入る光線の視射角は,写真のグラスの縁の楕円度から推測でき,作図で求めると約7°です.この光線を延長して水面との交点を求め,さらに,グラス壁で小円模様の3段目の深さの点と結ぶと水中では約40°の視射角になります.これらから液体の屈折率$${n}$$を求めると;$${n=sin(90°-7°)/sin(90°-40°)=sin83°/sin50°=1.3}$$が得られ,媒質は水であると推測できます.


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