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イスラームの繰り返し模様

イスラムデザインの美しい壁紙をご覧ください.

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pinterestからお借りたこのデザインは,Aziza(カタールのドーハを拠点とするアーティスト)によるものです.彼女は神聖幾何学とイスラムのパターンを研究しています.https://artofislamicpattern.com/#/6

この模様はとても魅力的で,イスラム模様の特徴がよく出ています.
色のグラデーションがとても素敵なのですが,ここでは幾何学の話をするので,色の区別ができない眼鏡をかけたと思って色は無視します.

この壁紙の成り立ちを,表紙の図に示しました.この図の平面群(全部で17種類あります)は,p4mmと記号で書かれるものです.このような繰り返しパターンは,モチーフとなる図形を周期的に配置して構成されています.

壁紙模様で,まず目につくのは周期(格子)で,これを平面群の記述の先頭に書きます.この例では,記号でpと書きました.2次元のブラベ格子のタイプはp(plain=単純)とc(c-centred=c面心)の2つしかありません.そして,17種類の壁紙の対称性のうちの15種類が単純格子に分類されます.2次元の格子のタイプ分類(2次元のブラベ格子は5種類)は,前回の「ネットワーク・パターンの分類」で始めたところです(参照ください).

この壁紙模様の例では,すぐ,黒い正方格子が目につきます.しかも,正方形の中心にも格子点のある(c面心格子)複合格子のように見えます.しかし,対角線の方向に目を配ると,一辺の長さが1/√2 になった,赤い正方格子(p格子)が見えてきます.

始めに気づいたc面心格子(黒い格子)は「正方形」の対称性ですし,後で気づいたp格子(赤い格子)も「正方形」の対称性です.c面心格子を作れたように見えましたが,黒い格子を1/√2に縮小し45°回転すると赤い格子と同じものになります.正方格子のはp格子だけで,c面心格子は存在しないことがわかります.

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この繰り返し模様のモチーフ(最小の非対称要素)は,表紙の図の右端に示した直角2等辺3角形です.このような3角形の模様付きタイルを作れば,このタイル4つで,p格子の単位胞内を作ることができます.出来上がった単位胞を並べれば,無限に繰り返す壁紙模様が出来上がります.このモチーフは非対称要素と呼ばれるように対称性のない最小タイルです.

最後に,平面群の対称性の記法で,格子タイプpに続く4mmは,格子点の対称性を記述する点群の記号です.
(注)正確に言うと,格子を法として準同型に写像して帰着した点群ですが,これはもう少し平面群の作り方の説明をした後にします.

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