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壁紙模様p3m1とp31mの違い

壁紙模様の対称性は,平面群で17種類に分類できます.その中で平面群p3m1とp31mの対称性はとてもよく似ていて,間違う人が多いようです.
以下の2つはともにエッシャーの作品です.比較鑑賞しましょう.

     p3m1                                                 p31m

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どちらも3回回転対称のある繰り返し模様ですが,鏡映面の入り方に違いがあります.白い線は鏡映面です.
P3m1の方の3回対称軸の場所には,鏡映面が集まっていますが,P31mの方には,鏡映面が集まっていない3回対称軸があります.
両者の絵から受ける微妙な印象の差は,図のモチーフもあるでしょうが,このような対称性の違いの影響もありそうです.

■正三角形の鏡室の万華鏡を作ると,p3m1の壁紙模様が観察できます.
しかしながら,p31mの壁紙模様の対称性は,ガラス屑ではなく3回対称のある図柄を物体に使えば別ですが,ガラス屑の万華鏡では得られません.
その理由は,p31mでは鏡室の内部の図柄が3回対称である必要があるからです.鏡室内のガラス屑は不規則に分布しているのが自然で,それが3回対称の図柄になるなどという偶然はあり得ません.

  p3m1の例 万華鏡映像       p31mの例  石英の結晶構造

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(注)平面群の記号p31m,p3m1の記法について:次の順に並べます.
・ p:単純格子,
・ 3:紙面に垂直な3回回転軸,
・ 単位胞の辺(並進方向)に垂直な鏡m(鏡の無いときは1),
・ その他の方向の鏡m(鏡のないときは1)

美しい幾何学,p.100,p.110~112



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