見出し画像

分子の構造式と対称性

物質は分子で構成されており、分子は,さらに,原子やイオン、ラジカルなどで構成されていることはご存知でしょう。
科学としての化学が始まった当初から、同一の科学的性質を持つ分子の部分は、同一の(対称的な)位置を占めると考えるのが通例であった。この考え方は、通常、少数の化学元素を扱う有機化学において特に有効であり、同じ分子内の同じ元素の原子でも区別する場合もあれば、同一視する場合もあります。例えば、CH3COOHという式で表される酢酸の分子では、炭素記号Cが2回繰り返されるが、2つの炭素原子の違いが強調されている。同じことが、2つの酸素原子Oにも当てはまるが、水素原子Hでは事情が異なる。
酢酸の性質を調べると、1つの分子には4つの水素原子が含まれるが、そのうち3つの水素原子は化学的性質が互いに等しく、4つ目の水素原子は異なる。
酢酸の式では、記号Hが2回出て来るが、そのうち1回目のHには添字3がついていることでわかるでしょう。

画像1

(図. Koptsikより)結晶がとれる47の単純な形態。
表の上段一行目は、図形の中心での断面図

ラウエがX線回折を発見し、結晶や分子の構造解析法が開発(ブラッグ親子)された後、分子や結晶中の構造単位の対称性や幾何学的配置という考えが、実験的に確認された。 そして、対称性理論を構造化学や結晶化学に応用するための広い分野が出現しました。原子や、原子の組み合わせ(ラジカル)を、点や図形で表示してみると、分子は規則的な(単純な、あるいは複合的な)形で表示されます。
もし、同一な特性を示す原子の種類,その数が既知で,分子の対称類がわかっていたら、この対称類と矛盾しない化学式を決定できます。
例えば、ある分子が、AとBの2種類の原子から構成されており、その対称性が~6・m(6回回映軸とその軸を含む対称面)であることが既知とします。

画像2

~6・mの対称性である場に同価な点を配置すると上図のようになります。(a)は一般点に配置した場合で12個の同価点が生じます。(b),(c),(d)は,それぞれ特殊点に点を配置した場合で、それぞれ、6点,6点,2点(1点)の同価点が生じます。従って、この対称類を満たす化学式(A,Bの比率)の候補は、
A1B1; A1B2 ;  A1B3; A1B6;  A1B12 です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?