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クロスカウンタァD.J.ブース零落

そのへんの会議室なんかによくある長机を持ってきた。その上に黒い布をクロスみたいに敷いてD.J.ブースにしよう。養生テープできれいに留めたいんだけど、表面の毛羽立った繊維のせいですぐに剥がれてしまうことがわかる。片方を留め終えて、満足げにもう片方の角に向かっている間にもう剥がれている。このクロスはそのままでは長机をきれいに囲うことができないので、暑中見舞いの包装紙みたいにきちっと折り込みたいわけで。時間をかけてでも。クロスの端を持ってピンっと張ってから余分な布を折りたたんでからしっかりおさえてから机に巻きつけてからテープで貼り付けてできあがる。それが剥がれかけている。いま剥がれた。最初の何度目かは偶然だ、偶然、と見ないふりをしてくり返す。正直きれいにたたむのも試行錯誤しているうちは楽しい。正直ちょっとズレてたのでむしろ剥がれてくれてよかったじゃないかと自分に言い聞かせてクロスの端を持ってピンと張ってから剥がれている。張りたい。張れた。張ってやったぞという確信と共に剥がれている様はさながらクロスカウンター。放つ満足と迫る失望が交互に、いや、同時に訪れて意識を失いそうになる瞬間。失いそうになるだけでわりとはっきりしている意識のままで、もういいやってなりそうなところに強力なクリップがでてきてこれまでの苦労は水の泡。あぁ、もちろんいい方のですよ。いい方の水の泡。えぇ。強力なクリップでクロスを挟めばそれでおしまい。長机の上のクロスというリングでたしかに戦っていたはずなんだけど、上手くできてる時とできてない時が実はそんなに変わらないことだとしたらベイビーそれとももっとよかったりして。Mr.J.D.!
ライ麦パンだいすきでした。

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