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変身くん 第3話

Sゲームブッカー


 ムクムクとまた何かに変身するたけし。さらに光を浴びたたけしは、短い両腕に短い脚が横に4本並び、丸っこい体でたらこ唇の間から黒い牙が一本飛び出し、転がってきた手斧を右手に持った怪物に変身する! それを見届けた円盤はどこかへ飛び去っていく。

「ケッケケ」

 たけしは器用に手斧をくるくる回して笑う。軽快に歩き出したたけし。

 見たこともない生き物が手斧を持って歩いてくる姿を2人の少年が見かける。

「うわーっ! 変な怪物だ!」

「あいつか?」

 引き返すように逃げ出す二人。逃げる二人にたけしは手斧を投げつける。

「ぎえーー!」

「ぎえーー!」

 飛んでくる手斧を見て、二人はまるで双子のように同じ悲鳴を上げる。手斧は後ろを走っていた少年の体を上半身と下半身に「ズボッ」と分断する!

 さらに手斧はブーメランのように戻る際、前を走っていたが、目をつぶって観念したように立ち止まる少年の両手首を「スパッ」と切り落とす!

「うわーうわー!」

 少年は両手首から血を噴き出し、その勢いによって後ろに倒れ、「ゴツン」と後頭部を打ち付け、頭から血を流して絶命! たけしは戻ってくる手斧をキャッチする。

 再び軽快に歩き出したたけしの前を「怪物現る!!」という見出しと、たけしによって最初に殺害されたお巡りさんの顔写真の載った新聞が風に吹かれて横切っていく。

 たけしは鎖を持って犬を散歩させるメガネをかけた青年がこちらへ歩いてくるのが見えて、条件反射的に即座に「ブンッ」と手斧を投げつける! もはやたけしは、心のない殺人マシンと化したか……。

「ウー」

「怪物か!?」

 それにまず犬が、続いて青年が反応する。

「ウーウ、ウーウ」

 勇敢にも犬は得体の知れない姿のたけしを威嚇する。

「ジョン!」

 青年は犬の名を呼びながら引き返すように逃げ出す。

「キャン!」

 手斧は「ズボッ」と犬の首をはね、青年は石につまずいて顔から地面に衝突、メガネのレンズが「ガチャン」と割れ、目玉が飛び出て目から血が噴き出る。手斧はさらにうつ伏せに倒れている青年の頭の上部を脳ごと切り落とす! たけしは返ってきた手斧をキャッチしてまた笑う。

「ケッケケ」

 軽快に歩いていると、毛がふさふさの黒猫がたけしの前を横切る。

「ニャーゴ」

 たけしは何やら対抗心を燃やして、黒猫に手斧を投げつける。

「ニャーゴ!」

 手斧は「スパスパッ」と黒猫の足だけをすべて切り落とす! まるでコンピューターで制御されているかのような正確さだ!

 ただならぬ猫の鳴き声に反応して、爆弾博士の家の窓が「ガッ」と開き、爆弾博士が顔を覗かせる。

「怪物め。まだ生きていたのか」

 爆弾博士はそう呟くと、窓を「ガッ」と閉める。

 その家の一室で大きなボタンの水色のシャツに着替えた爆弾博士が作業台の上でまた何かの作業をしている。

「ばくちくりにオルイを混ぜる」

 大きなどんぶりに入った湯気の立つ茶色い謎の液体を平たい棒で混ぜている。

「メッチを混ぜる」

 メッチ箱に入ったメッチをどんぶりに数本投入する。

「かやぐを混ぜる」

 円形の筒に入った黒い粉もふりかける。

「よし」

 爆弾博士は別の部屋に置いていた改造銃を取りに行き、どんぶりに入った茶色い液体を銃口の蓋の開いた改造銃にそのまま注ぎ込む。

「できた!」

 爆弾博士はパカッと蓋を閉め、冷や汗を流しながら玄関のドアを開けて家を出る、さらに改造されたらしき銃を片手に。さしずめ大改造銃といったところだろうか。今回はドアは開けたままだった。

「出てこい怪物!」

 大改造銃の銃口を一直線にたけしの心臓の辺りに向ける。これを外せば、待っているのはこの世の終わりだ! 爆弾博士のその思いに気づいたかのように、たけしもまた冷や汗を流しながら全力で手斧を爆弾博士に向かって投げつける! 爆弾博士はすぐさま大改造銃の引き金を引き、銃口から茶色い液体を噴出させる!

「ドローンドローグ!」

 「ビチャッ」と茶色い液体を全身に浴びたたけしは、誰も聞いたことがないような断末魔の叫び声を上げる! 

「ウゲーーーー!」

 「ボーウ」とたけしの体が燃え出す。そのとき、手斧が爆弾博士の頬をかすめる。その傷口からは血が流れたが、爆弾博士は達成感に満ちた表情をしていた。

 「ボーウボーウ」とたけしの体はさらに燃え、「ボウ」と小さくなって「シューーッ」と煙だけ残して燃え尽きる。爆弾博士は燃え跡に歩み寄り、完全に煙だけになったのを確認すると、力強くひとつうなずく。満足した様子で大改造銃片手に玄関のドアを開け、家の中へと戻っていく。

 どこからともなくあの円盤が上空に現れ、住宅街の一角に着陸する。円盤から一つ目でたらこ唇の間から黒い牙が一本飛び出した、犬のような耳を生やした二人が出てくると、灰色のすすだけになったたけしを意味不明な言葉で会話しながら見下ろしている。その二人の顔は少しだけ悲しそうに見えた。

END


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