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【シンガポール・リート銘柄】ヘルスケアのFirst Reit、最新決算(23年1Q)。

シンガポールに上場している不動産投資信託(REIT)で、インドネシアや日本、シンガポールのヘルスケア施設に投資するFirst REIT(SGX:AW9U)が、2023年第1四半期の決算(1月〜3月の3ヶ月)を公表しました。

First REITの株価推移


記事執筆時現在(23年5月7日)のFirst REITの株価及びファンダメンタル情報は以下のとおりとなります。

株価推移に大きな変動はなく、利回りは9.36%、PER(株価収益率)は13.25倍。利回りからは割安、PERは適性水準でしょうか。

(Source: Yahoo Finance)

一口あたり分配金(DPU)の状況


株価の変動及び配当金というかたちで投資のパフォーマンスに重要な影響を与える一口当たり分配金(DPU: Distribution per unit)は、前年同期比で0.66セントから0.62セントへ6.1%減少という結果でした。

これは、以下の影響によるものです。

  • 借入利息など財務コストの上昇

  • シンガポール高による為替差損

日本及びインドネシアの不動産を運用しており、賃貸収入は現地通貨であるため、各国の通貨安はシンガポール建てでの換算額が減少となり、リートのパフォーマンスが減少する結果となります。

賃貸その他の収入(Rental & Other Income)は前年同期比5%近い増加となっており、これは以下の結果によるものです。

  • ・22年1Qに日本で新規投資の14施設が、前期は3ヶ月分ではなかった

  • ・インドネシア、シンガポールにおける増設施設より、賃貸料増加

  • ・Siloam 病院の空室による賃貸料減少とSGD高による為替差損で相殺

(Source: First REIT 1Q 2023 BUSINESS UPDATE)

運用資産残高(AUM)の状況

First REITの運用資産残高は前期末(2021年12月31日)比で8億シンガポールドル減少し、11億90百万シンガポールとなりました。

こちらは主に、日本円及びシンガポールルピーの通貨安によるものです。

この増資により、OUE Lippo HealthcareはFirst REITの44.1%を保有する結果となり、インドネシアの財閥であるLippoグループによる強固なスポンサーシップの下運営されていると考えられます。

主要な投資資産はインドネシアのヘルスケア施設で、全体の賃料に占める割合は80%超、次いで日本の14%、残りをシンガポールへ投資します。(2022年末データ)


(Source: First REIT 1Q 2023 BUSINESS UPDATE)

財務の状況

シンガポールも金利上昇局面であり、負債の利息負担の影響が気になるところです。

負債の総額については、前期末(2021年12月31日)から92百万シンガポールドル増加していますが、「リートの負債÷リート資産」の比率で表すギアリング比率は38.5%から39.0%に微増。

負債の金利は3.7%から4.7%に上昇し、財務の安全性に関する指標:インテレスト・カバレッジ・レシオ(「収益÷支払利息」で算定)は5.0倍から4.2倍へと低下しており、収益でカバーできる支払利息の割合は定価、金利の観点から安全性が若干低下しています。

一方で、金利が固定されている負債の割合は、59.6%から62.8%に増加、金利上昇の影響を受けない財務体質への努力が進みます。


(Source: First REIT 1Q 2023 BUSINESS UPDATE)

First REITの今後の戦略

First REITは、インドネシアのヘルスケア施設に偏った投資戦略を改め、先進国へのヘルスケアへの投資を進める方針で、2022年度は日本の14施設への投資を完了しています。

2027年までに運用資産残高における先進国の資産割合を50%超とする計画を公表しています。

また、財務の改善をすすめるため、2022年4月には、シンガポールで初のヘルスケアに係るソーシャルボンド(社会的課題の解決のために発行される債券)を起債に成功。

2022年11月にはローンの早期借換えを実施し、2025年5月までは資金の再調達がいらない状況となっています。

(Source: First REIT 1Q 2023 BUSINESS UPDATE)

さいごに

23年1Qは、日本の14介護施設からの投資収入をすべてカバーする3ヶ月となり賃貸収入が増加した一方、円安によりその収入増が相殺される結果となりました。

またインドネシアのテナントであるPT Metropolis Propertindo Utamaから賃料未払いが発生していましたが、2023年末までに全額が返済される計画が策定されています。

配当利回りは9.36%と高い水準にとどまっており、投資家は引き続き金利上昇による財務の悪化、テナントの未払による賃料の回収不能、外国為替リスクやインフレ上昇などを考慮しているいるようです。

一方で、ヘルスケア施設の需要は、日本のような先進国でますます高まっていくと思われ、さらに円安のため優良物件を有利な価額で取得できる可能性もありそうです。

引き続き、日本の介護施設に投資するシンガポールリートであるFirst REITに注目したいと思います。


なお当記事は、投資を推奨するものではなく、あくまでも参考情報として提供するものです。投資は自己責任となりますので、何卒よろしくお願い致します。



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