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指先ひとつが擬似的な死を贈る

女同士だから、セックスできるタイミングは月に半分くらいしかない。


2人が別々に生理が来たなら、月の半分だけ。
そして今月は、その残りの半分のうちほとんどをお互いが別々に風邪を引いていた。



色んなものが不足する。性欲の行き場だけでなく、色んなものが。
風邪を引いてたらキスも控える。物理的な距離も遠くなる。


色んな気持ちが、寂しさを覚えて小さく瞬く。




やっとKanaの風邪が治ったのに、今度は生理が来てしまったらしい。
痛みが一時的に引いていても、興奮したり大きな運動をしたら、生理痛は重くなる。


これはもう、今月は何もかも諦めた方がいいかもしれない。


向かい合うことが出来ないなら、せめて同じ方を見る。同じ映画や、本や、ゲーム。


……同じ方を向くのは確かに楽しいけれど、向かい合わなければ感じることの出来ない圧倒的な安心は、得ることが出来ないまま。



明日から出張。その前の日の夜。
隣に横になったKanaが、こちらへと覆いかぶさってきた。

そうだね、数日会えないし、マスク越しにとびきりのハグをせめて────そう思ったのも束の間、少し下の方でちゅ、と小さく音が鳴る。柔らかさが肌へと落ちる感触。


柔い、柔い唇が、小さなリップ音が、肌の上で小さく弾けては中へと染み込んで、また弾けては染み込んでが延々と繰り返されてゆく。



最初は軽い戯れだと微笑ましく思っていたものの、全く終わる気配がない。気持ちの良いくすぐったさは、次第に淡い熱となって肌に纏わりついてゆく。吐息にまでそれが滲んでくる頃には、思考が靄がかっていた。



明日は、いつもより早く、起きなくちゃならない──シンプルなそれだけの事実をちゃんと手繰り寄せるのに数秒を要して、そして掻き集めたそれは続いてゆく水音に溶けてゆく。ただひたすらの、小さなキス。腕に、鎖骨に、首筋に。一体どれだけの時間、そのあたたかな嵐を身に受けていたのだろう。気付けばもう理性の骨はほとんど抜かれて、呼吸はこれ以上なく深く、四肢の力は抜けて────体の隅々が「開き」切ってしまっていた。


そんな意識の蕩けた中、Kanaの指がつ、と肌を撫でる。その一本、その些細な刺激に、そこから背筋を駆け上がって脳に至るまで、ばちばちと何かが弾け声に成る。たった指先の柔肌がなぞる、それだけの刺激が、神経を直接爪立て引っ掻く暴力のような行為となる。蕩けた意識が一瞬にしてぐちゃぐちゃに犯される。目に見えない、自分の中の内側が、どこまでも無防備されたそれらが、全身でのたうち悲鳴をあげ続ける。

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