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快楽の深海は息すらできなくて、名前すら呼ぶことがかなわない。

快楽の海に溺れるというけれど、
快楽の深海に沈んだら、息すらできない。



名前を呼ぶことすら叶わず、喘ぐというより苦痛への嗚咽に近い。子音は紡げても、母音が出ない。それに足るだけの酸素を、吸い込むことすらままならないから。


気持ちよくて、気持ちよくて、気持ちよくて、それはもう"気持ちよさ"なんて柔らかな形はしていない。苦しいもの。耐えるもの。拷問。そんな硬い言葉のほうがしくりと来る。だのに根底は気持ちいいから、体はもっと欲しくてもっと開いて深いところへと溺れていく。いつしか暴力的な気持ちよさは、一定までの痛みすらないものにする。


この感覚を表す言葉が欲しい。拷問のような快楽の奔流、暴力のような圧倒的な刺激。それは、感度を開いて開いて開いた先に、そっと柔い指先が優しく丁寧に撫ぜるのが、その行為に反して神経をガリガリと削り潰すような感覚と相成って、はじめて、肉体に顕現する。

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