一瞬の命の星を感じるためだけに、SMがある。
この日、『ナナとカオル』Black Labelの4・5巻を一緒に読んだ。ずっと、いつか読んで欲しかった作品だ。途中でKanaが涙をぼろぼろとこぼして、号泣し始めた。漫画でこんなに泣いたのは初めてだと言った。
泣く彼女を抱きしめながら、私はどこかで冴えていた。頭の中が凪ぐように静かだった。祈りだけが、湧いてきたから。大切な人。この人の幸せが、Sであるというその側面もすべて含めて、一番幸せ実る人生を歩むように。私でなくていいんです。その出会いがあれば、特に彼女の持つSと呼ばれる願いをすべて満たしてくれるような人が現れたなら、喜んで彼女の隣を離れたい。それが私の愛だ。私自身の持つ、愛で祈り。── 一方で、それは自信のなさでもある。彼女は私のご主人様だけれど、私は彼女のパートナーです、と胸を張って言えないのは。……私が受け止め切れていないからだ、彼女の欲望を。願いを。痛みを与えたい彼女に対して、私は痛みに弱すぎる。
そんな彼女への愛を、少し迷って、彼女に告げた。号泣する横で、私があまり泣いていないその温度差を誤解されたくない、という小心から。
「いつも誰かに応えるばかりで、だから、欲しいものをぶつけてと言われても困るし、ぶつけたら相手が壊れてしまうのもわかるから」
やがてぽつぽつと、Kanaが零してゆく。彼女が思いをこうして伝えてくれることは少なくは無いけど多くもない。だから、嬉しかった。胸の内を知れるのが。
脱線するけれど、私は自分の恋愛観を最近定義しなおしている。恋愛指向はストレートのはずだけど、だとしたら元カノに関してやはり成立しない。でも、女性にときめくこともある。それは、恋では無い。……甘えたい、求められたい。多分、強さを求めている。頼れる強さを。守ってもらえる、身を預けていいと思える強さを。それが相手に備わっていれば、多分性別は大した問題じゃない気がしている。
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