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SONY MDR-CD900ST

この型番を見ただけで、音楽業界のみならず、オーディオに多少とも興味を持っている方は、どんな製品かお分かりになりますよね。
密閉型ヘッドホンと言えばこれ?そうです、日本を代表するモニタータイプのヘッドホンでこれほど長く広く使われ続けている製品は、そうはないでしょう。

前身は、末尾のSTが付いていない一般向けモニタータイプ密閉型ヘッドの頂点を目指して開発された製品です。私が九州に勤務しているときに、欲しくてたまらないものの一つで、当時の価格2万5000円でしたが、2割引きで購入しました。

純粋にモニター性能を重視した製品であったために、意外にも評判がGOODなのかBADなのか二分していました。音楽鑑賞的に言えば、素直過ぎる特性を好まない層には、受け入れ難かったようです。どっちかと言えば、ドンシャリ直前の低音高音重視の製品を好む評論家が、口を開くとやれ「包み込む低音が不足している。」とか「高耐入力の割に馬力感がない。」などと言いたい放題でしたが、製品の良さがそれらの悪評を吹き飛ばし、スタジオ用にチューニングして末尾にSTが付いてからは、あっという間に日本中の録音スタジオのみならず、音楽関係者がこぞって購入するようになりました。

勿論、後継機も発表されてはいますが、音楽シーンの映像には、未だにほとんどがこの製品で占められていることに、お気づきでしょうか。
例の一発録りの番組にも、必ずこの製品が使われています。

スタジオでの存在感は無く、ある意味空気のように当たり前にそこにあるという感じになってしまっているでしょう。私が購入した当時、そこの店員がこんなことを尋ねてきました。
「お客さんは、PCMのシステムでもお持ちなんですか。」
そう、当時は、デジタル化の前夜で、デジタルの代表と言えば、PCMだったのです。

PCM=Pulse Code Modulation(=符号化変調)のことで、アナログとは一線を画す高性能録音再生技術でした。
そのシステムを持っているの?と思われるほどの資質を持っている高性能のヘッドホンだったということなんです。1987年ごろの話で。

末尾にSTが付いてプロ用に発売されたのが、1989年です。その5~6年後に、一般向けにも発売されたと記憶しています。既に初代発表から37年も経っているのですから、当時、いかに先進的で意欲的な設計だったかが伺えますね。

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