永遠の嘘ついてくれ
これは、中島みゆきが吉田拓郎に頼まれて作った曲だというのはご存じの方も多いと思います。拓郎がシンガーソングライターとして不調のどん底に沈んでいた時、中島みゆきの「ファイト!」を歌って、それを聞いた聴衆が拓郎の持ち歌と感じたほど、自然に歌っていました。
その後、拓郎はみゆきに「俺はもうファイトのような曲が作れない。俺に曲を作ってくれ。」と頼みます。しかし、みゆきはこう言います。「この歌を最後にしなきゃね。」つまり引退なんか考えるな、という叱咤激励を口にしたというのは、業界では有名な話です。
古くは、中島みゆき自身が、拓郎の追っかけをやっていた程のファンでしたので、いつの間にか立場が入れ替わってしまったのです。
曲が提供されたのは、1995年。そして、中島みゆき自身がセルフカバーしたのが1997年。
そして、劇的な出来事が起きたのは、つま恋2006の舞台ででした。
この時、この舞台の総指揮を取っていたKさんの願望は、吉田拓郎と中島みゆきを一緒のステージに立たせるという、かなり無理なものでした。
しかし、中島みゆきがポプコンでグランプリを取った時にも関わっていたKさんは、絶対に実現させてやる、そして、これが自分の花道として、この仕事を終えたら引退まで考えていたのです。
ついに、その時がやってきました。
拓郎が「永遠の嘘をついてくれ」のさびの部分を歌い終わって、瀬尾一三が指揮するバンドが、やや転調してイントロを流し始めると、舞台の上手から白のシャツにジーンズという姿で中島みゆきが颯爽と登場します。
聴衆は一瞬のこの出来事に驚いた後、一斉に歓声を上げます。
ピンライトはみゆきだけに当たり、拓郎は裏方に徹するのか、ライトが直接当たらない位置で、ひたすら下を向いて演奏を続けています。
一番を歌い終わった後、ややはにかみながら互いに顔を見合わせて二番に入って行きます。そして二番が終わり間奏が終わった後、ようやく拓郎にライトが当たり、彼が歌いだします。
その後は、合唱になります。面白いのは、元祖早口歌唱の拓郎より、中島みゆきの方が早口歌唱が上手だという事実です。
そして、あとで「奇跡」と言われるステージで、拓郎は「緊張したね。」の感想を漏らしています。
このステージを企画した先のKさんは、あまりの感激に再び音楽ん携わろう言う意思に突き動かされ引退を取りやめ、会社にもっと仕事を続けたいと申し出、それが認められたそうです。
それくらい、インパクトのあるステージが現出したのですね。
後に、拓郎は自分の持つラジオの最終回に、しみじみとこの時のみゆきの衣装について、「やられた!」との感想を述べています。
でも、二人の不思議な疎遠の様な、それでいて、身近な存在の関係は現在まで続いています。
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