麦踏みをしたことが有りますか

最近の畑ではとんと見かけないのが麦踏みです。
というより、麦踏みという言葉自体を知っている人の数自体、もう少数派なのかもしれません。

麦踏みとは、文字通り畑に植えられた麦を、霜が降り始める前までに、足で踏みつける作業です。踏みつけるというと何か悪さをしているようにも感じられますが、これを行うことによって冬の霜柱などによる凍ってしまう害を防ぎ、伸びすぎて身がスカスカになることを防ぎ、根っこもたくさん張るようになりますので、寒さに強くなるのだそうです。
また、麦踏みをすると成長してからの茎が強くなりますので、倒れに強くなっています。しかも、根が分けつしやすくなり、収量も増えます。

そんな良いことづくめの麦踏みですが、伸びてきた麦を、丁寧に踏んでいく作業なので、労力はかかるし、時間も取られます。手をかけただけのことはあるのですが、農業従事者の高齢化のためそれだけの労力を投下すること自体が困難になってきたのです。

で、私はどんな関わりをしたかといえば、それは高校2年生の11月に遡ります。歴史の時間の途中で、昔の狩猟には欠かせない矢じりの話になりました。「矢じりは黒曜石でできているものがほとんど…」「今でも、比較的新しく開墾された畑では、よく見つかる…」「その場所は、八王子の安戸の切通の近く…」と、矢じりがいまでも取れる可能性のある話になりました。

私「先生、その場所なら知っています。」
先生「それなら見ってみたらいい。でも、一つ注意しとくぞ。畑は農家さんの持ち物だから、自由に入っていけない。ちゃんと断って許可してもらえよ。」

その授業の有った週の土曜日の午後、さっそく安戸の切通に行ってみました。確かに、新しく切り開かれた土地のようで、畑が一面に広がっていました。さっそく、そばにいたお百姓さんに声をかけて、矢じりを拾いたいといったところ、「麦踏みをしながらだったら、入っていいぞ。」と言って貰えました。

麦踏みの仕方を教えてもらって、畑の矢じりを探し始めました。時刻は5時に近く、もう場所によっては薄暗くなってきています。でも、運が良かったのか最初から三列目くらいに畝に差し掛かった時、何か光りました。

黒っぽい透き通った石のような破片でした。一つ見つかったら、そのそばにもう2~3個見つかりました。そして、あとは全く収穫はゼロ。きっとビギナーズラックっていうやつだなと思いながら、小一時間麦踏みを続けました。

「おーい、もう暗いから、帰んな。麦踏みありがとうな。」
そんな声に送られて帰宅しました。そして、家にあった石の図鑑を見ると、拾った石は紛れもなく黒曜石でした。

次の歴史の授業で、その顛末を先生に話したところ、石を拾ったことをほめるのはそこそこで、むしろ、麦踏みを手伝ったことの方が印象が良かったらしく、えらく褒められて、こそばゆい思いをしました。

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