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「次世代型かかりつけクリニックの最高のUXを一緒に実現したい」。エンジニアと医師が語る、クリニックTENのこと

2021年の5月に渋谷に開業した次世代型かかりつけクリニック・クリニックTEN渋谷。「スムーズな体験で医療をもっと身近に」をコンセプトに掲げ、スマートクリニックとして完全WEB予約・キャッシュレスを実現しています。それらのシステム開発を担うのは、スタートアップ事業支援を行うセブンリッチグループの開発チーム、DELTA。クリニックTENでは、医師や医療従事者、エンジニア、経営/事業が三位一体となってクリニックの運営を行っています。今回のnoteでは、クリニックTENとDELTAの開発者にシステム開発の舞台裏や今後のビジョンを聞きました。

左から大江・石黒・丹 

大江航(おおえ・わたる):クリニックTEN 共同創業者&事務長
新卒でデロイトコンサルティングに入社し、主に東南アジアや中国にて自動車領域の商品企画・経営支援に従事。その後、DeNAにてモビリティ領域における経営戦略・新規事業開発を担当。DeNA退職後、2021年5月より医師メンバーとともに、デジタルを組み込み新たな患者と医療の関係性をつくるクリニックTENを共同創業

石黒剛(いしぐろ・ごう):クリニックTEN 共同創業医師
現在の病院中心の医療システムに疑問を持ち、日常生活に医療を提供するシステム作りをミッションに掲げる。2019年、訪問診療専門の「いしぐろ在宅診療所」を兄と二人で開業。クリニックTENでは若年者、働く世代に焦点を当て、正しい予防医療を提供する、生活に溶け込む医療機関の実現を目指す。

丹哲郎(たん・てつろう):DELTA 代表
東京大学教養学部卒。2015年から、大規模なエンタープライズソフトの開発チームにて、顧客折衝からロードマップの策定、実装テスト、デリバリーまでを担当。全社最速でマネージャー補佐まで昇格後、高度に複雑化・属人化していたインフラチームのマネージャーに就任。インフラの改善、新技術の検証、パフォーマンスチューニングなどを担当。その後2019年12月にSeven Rich GroupのCTOとして迎え入れられ、グループ横断の技術支援組織 = DELTAを発足。現在では25以上のグループ事業とクライアントの技術課題を解決している。

クリニックTEN
「スムーズな体験で医療をもっと身近に」を完全WEB予約制・待ち時間0のフラットな受診体験を目指すこれからのかかりつけクリニック。2021年5月、徒歩0分エリアに開業。https://clinicten.jp/

DELTA
DELTA(デルタ)フルスタックエンジニアで構成されるエンジニアチーム。テックリードな事業開発支援、プロトタイピング、UI UXデザイン、既存業務のDXまで、導入期から成長期、成熟期に至るまでのライフサイクルに合わせたテクノロジー支援を実現している。https://team

創業メンバーが一患者として感じた課題感から生まれたクリニック TEN

ーークリニックTENはスマートクリニックを謳っていますが、具体的にどういった特徴があるのでしょうか?

大江:クリニックTENは「次世代型かかりつけクリニック」を目指し、完全WEB予約制・キャッシュレスでオンラインをサービスの設計のベースに持ってきています。また、これまでの「患者さんが医師に伺いにいく」医師中心のクリニックではなく、患者さん中心の設計で、待合室を設けず、患者さんに診察室でお待ちいただき、そこに医師が伺う形でクリニック自体を設計しているのも特徴です。診察室は茶室をイメージした空間でリラックスして患者さんにお話いただける空間を意識しています。

患者さんが求めている体験を実現するための空間づくりや現場のオペレーションを三位一体になって患者体験を作っていく。それを通じてこれまでなかったような関係性や信頼関係を作っていくのが僕たちが目指す「スマートクリニック」です。

茶室をイメージした診察室

ーーそうしたクリニックを作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

大江:もともと僕は渋谷のメガベンチャーで働いていたのですが、渋谷で働く一人の患者として、「自分の健康を知るための情報が溢れすぎていて結局なにをすればいいかわからない」という課題意識を抱えていたんです。
ネットには膨大な情報が掲載されていて、一体何が正しくて間違っているか判断がつかない。信頼できるかかりつけの医師や医療従事者がいることで、漠然とした健康への不安は解消されるのでは、と考えたのですが、同時に、そこに辿り着くまでのハードルが高いことに気づいて。

病院に行くとしても電話でないと予約できなかったり、WEB予約のシステムがあっても使いにくかったり。スムーズに予約が取れたとしても、診察室で長時間待たされたあげく、診察自体は3分で終わり……。、それって、病院や医師との信頼関係が生まれづらいですよね。
そんな課題を、一気通貫で解消できるようなクリニックを作りたいと思ったのをきっかけに、2年前クリニックを創業することを決めました。

TENのエンジニアが行うのは、「システム」の開発だけではない。院内設計も、オペレーションも、三位一体で。


ーークリニックTENの院内設計にはエンジニアの視点も活かされていると伺いました。具体的にはどのように設計を進めていったのでしょうか?

丹:僕と大江さんと石黒さんで、エンジニア・患者・医師の立場に立ってロールプレイングしながら診察室の設計を進めていきました。オペレーションとシステムの整合性を三者で確認して話し合いながら進めていって、施設導線を決めるプロセスにもエンジニアの視点が反映されています。

大江:TENでは「え、もう帰っていいの?」というスマートな感動体験を作るためには1分1秒の待ち時間を減らすことをまずは最重要視しています。

そして、待ち時間を作らないようにするには予約枠のシステムと院内の導線をどう設計するかが重要です。予約枠のシステムのクオリティが高ければ、で待合室を最小限に抑え、「もう帰っていいの?」が実現できるはず。
そんな仮説のもとに設計を進めていった結果、「待ち時間が発生しない施設導線」と「体験」、「システム」と「現場」と空間が完全にひとつの成果物として連動しました。

石黒:これは、最終的な形が僕たち3人の頭の中でイメージできたから実現できたものだと感じています。たとえ「同じものを作りましょう」と言っても、丹さんが考えるもの、大江さんが考えるものはそれぞれ違うはず。立ち上げの段階から医師・事業責任者・エンジニアの三者で育ててきたからより立体感や手触り感のあるものになっています。特に、開発者の視点が立ち上げ段階で入っていたことは、理想のクリニックを実現できた要因として非常に大きいと思っています。


ーークリニックTENではLINE連動した予約サイトやオンライン問診票、オンライン決済などさまざまなソフトウェアが動いていますが、エンジニアとしてはどの開発が一番大変でしたか?

丹:予約の空きを管理する機能ですね。クリニックの収支が成り立つためには多くの患者さんに来てもらいたい反面、「待たない」体験を実現するためには予約数に制限を加える必要がある。現場が回らなければ体験も悪くなってしまう。
現場で働く医師や看護師のEX(Employee Experience)と経営と患者体験の三者を「三方よし」になるようにする必要があるわけです。
人間が予約を取る場合はベテランの事務さんが高度な整理を行っていたりするのですが、それをソフトウェアで実現するとなると難しかったですね。
この仕様は今も模索中で、医師とディスカッションしながら改善を続けています。

石黒:オープン当初は必要最低限のシステムと医療の質が担保されていればいいと思いつつも、なにが必要なシステムなのかの優先順位をつけていくのが大変でしたね。ここまではできるけどここからはできないよというのも手探りでした。その知恵の出し合いがとても大事だし、面白かった部分ですね。

ーークリニックの現場にコミットしながら開発をしている丹さんですが、これまではどんな働き方をしていましたか?また、現場と密接なエンジニアのモチベーションはなんですか?

丹:前職は不動産管理の開発をしていました。私は現場主義なので、現場の人と話しながら開発することが好きなんです。だから、今回のように現場と一緒になって課題を共有し開発を進めるのは、どんどん本質に近づいていく感覚があってとても喜びがあります。

ーークリニックTENのシステムはすべてDELTAが開発しているのですか?

丹:すべてではなく、状況に応じて市販のものと組み合わせて運用を行っています。たとえば、電子カルテを内製化することによって患者体験が大きく向上することはないので、既存の電子カルテを導入する。患者体験に直結する予約・決済の領域は内製化によって体験を作り込む。そうなると予約情報を電子カルテに連携する必要が出てくるのでそこも開発するという形です。どこに既存のものを使ってどこを新しく作るのか、既存と内製のものをどう連携していくのかを考えて病院作りをするのはすごくやりがいがありますね。未来のクリニックの形を作っている感じがします。

ーーそれこそエンジニアが現場にいないとできないですよね。

石黒:医師の視点から「こうしたらできる」という未来図を思い描くことはできます。ですが、すべてを医師の力だけで補うのは難しいです。
100ピースぐらいの完成形に対して、どう埋めていけばいいかを一緒に考えてくれる丹さんのような存在があるからこそ、僕らの目指すクリニックってこうだよねってところに近づいていますね。

ーークリニックのシステムに関する話などは、日々ディスカッションを重ねているのでしょうか?

丹:そうですね。僕は普段はセブンリッチのオフィスにいて週2~3回TENに訪れるのですが、コミュニケーションをとるなかで現在の課題をキャッチアップしています。

大江:エンジニアチームがやっていることって、ただスムーズな予約システムをつくることではなくて、”驚きの体験”を作るために現場の僕らと同じ目線に立って、テックでは何をするかっていうことを一緒に考えることだと思っています。医師目線・患者目線・エンジニア目線の三方が同じ目標を目指してディスカッションを進めていくことが「次世代のかかりつけクリニック」を根付かせるために最も大切な部分なんだろうなと思います。

「健康になるきっかけづくりができる場所」を、想像力豊かなエンジニアと創り上げていきたい

ーー医師の視点から、こんなエンジニアと仕事がしたい、という思いはありますか?

石黒:多視点的な想像力と能動的な柔軟性がある方が良いですね。ひとつの事象に対して、複数の視点から眺めるとどんな景色が見えるのか想像ができる人はより現実最適に近いものが作れると思っています。さらに経験に囚われない能動的な柔軟性がかけ合わされば、さまざまなアプローチによりハイスピードで最適解に近づくでしょう。

ーーエンジニアの視点からはどうでしょうか?

丹:現状、対患者のUXという観点の検証はある程度回っているのに対して、現場がもっとスムーズに回るように管理側の機能を改善する必要があります。それをやるためには粘り強く現場の人と話しながら改善策を考えられる方がいたらいいなと思っています。TENが目指す形として、TENの業態をパッケージにして外販していきたいという思いもあり。
そのためにTENだけに適応させるのではなく、外販を視野に入れたプロダクトのあるべき方向を考えて改善を回していける方に出会いたいですね。

ーーなるほど、システムの外販も見通しているのですね。

大江:僕らは医療業界を変えたいというよりも、僕らが実現したい患者体験を一人でも多くの人に届けたいという想いが強いです。ですので、単に便利な予約システムを提供するだけではなく、次世代型かかりつけクリニックが提供する患者体験を実現するシステムと空間をセットでクリニック各院にインストールしていければと考えています。

ーーそれでは、医師の視点から、クリニックTENのビジョンをお聞かせください。

石黒:僕はTENに入る前から、愛知で通院できない高齢者の患者に対して訪問診療をやっています。超高齢社会の日本において訪問診療は向こう20年は必須となるものですが、長い目で考えた時に、日本の医療現場にプラスになるものばかりではないと常々思っていました。目の前の超高齢社会のさきに日本の未来を透かして眺めてみると、また異なる課題が見えてくるのかなと思います。40年先の日本では、超高齢社会の結果、定年退職が80歳になっていたり、そもそも定年がなくなってる可能性さえもある。移民を積極的に受け入れない限り、そうしないと社会を支える生産人口を保てないでしょう。

未来の日本を見据えた時に医師としてできることは、予防医療や健康寿命を延ばすことでよりハイパフォーマンスで社会に参加できる人を一人でも増やし、生産活動時間を1日でも長くすることです。
でもドクターひとりでできることは限られている。外来でいろんな知識を伝えたとしても、1ヶ月に話ができるのは多くて2,000人。それでは日本は変わらないと思っていたところにTENの開業の話を聞いて、今の医療システムに一石を投じるようなことができたらおもしろいし、TENを模範してくれるようなクリニックも増えたらいいなと思ってい参画したんです。40年後の医療に対してインパクトが残せれば医師になった甲斐があったなと思っています。

ーー安定したパフォーマンスを出すための予防医療の側面としても、かかりつけクリニックの有無は今後重要度が高まってきそうですね。待合室を作らないクリニックというモデルは既存の病院のあり方からするととても革新的なように思えます。

丹:国民皆保険制度下の現代日本においては一人の患者さんの単価は大体決まっているため、クリニックが稼いでいくためにはとにかく患者さんを増やすことしか手が打てないと言われています。したがって既存のクリニックが「待たされる」というのはある意味経済合理的だといえます。
ですがTENとしては人件費効率と不動産効率を高めることで利益率を高められるという仮説を持っています。ソフトウェアの力があれば経済合理性と質の高い患者体験がトレードオフでなくなる未来を作れるかもしれない。それが、エンジニアである僕の目指すところです。

石黒:医療機関は自分たちで医療の金額を決められなくて、国が決めた金額の医療をやれば生計が成り立つシステム。なのですが、ただ国の言った通りのことをして上手くいくだけじゃ面白くないし、本質的に良いものや少し未来にあっているものは作れない。

既存のやり方で人にとって良い物を作ろう、人にフォーカスしようとすると経済非合理なのでは?と壁にぶち当たるところを、テックの力を借りることでいかにいい塩梅を詰めていくかを構築することを面白がっている人たちがTENには集まっていますね。

ーー最後に、クリニックTENや医療へのビジョンを教えてください。

石黒:僕が目指したいのは、医療を意識しなくてもいい世界。医療って究極的には僕らの仕事がなくなり、みんなが自律的に健康になっていくのが最善です。
衣服をまとうように医療情報に触れて、最適な選択ができていく世界になっていてほしいですね。もちろんそこまでの歩みはものすごく長いと思いますが、患者さん一人ひとりが健康にまつわる情報を自分で取捨選択できる知識を持ちながら、そこに医療や医師という選択肢を乗せられるような社会になってほしいし、していきたいと思っています。

大江:僕らが目指すのは20年先40年先に健康であるためにきっかけをつくる場所。そこを見据え、クリニックTENでは医療の敷居を下げ医師と患者が関係性を作ることを最重要視して取り組んでいきます。

ーーありがとうございました。

セブンリッチの開発チーム・DELTAでは、TENでともに働くフルスタックエンジニアを募集しています。本noteを読んでご興味をお持ちいただいた方は、下記リンクからご応募ください。














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