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【News:速報=「京都人の密かな愉しみ」最新シリーズ第4弾「燃える秋」を来年1月30日に放送へ(2020)】

 京都人の実像と古都の美しい魅力を描いて高い人気を誇ってきたNHKBSの番組「京都人の密かな愉しみ」で2017年9月に新たに始まったシリーズ「Blue 修業中」の最新作となる第4弾「燃える秋」が来年2021年1月30日午後7時半から9時10分まで、NHKBSプレミアムとBS4Kで放送されることが分かった。2015年の放送開始時から続いてきた和菓子店の物語が2017年5月に放送された「桜散る」で完結。2017年夏には、京都の伝統的な技術を継いでいこうと奮闘する若者たちを描く現シリーズ「Blue 修業中」の放送が発表されて番組の継続が決定した。現シリーズは2017年9月放送の「送る夏」と2018年4月放送の「祝う春」、2019年8月の「祇園さんが来はる夏」が予想以上の仕上がりで第4弾への期待が高まっていたが、今年に入って新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のために撮影ができない状態となった。しかしその陰で今年の後半に密かに撮影を進め、12月22日のクランクアップにこぎつけたようだ。料理人が絶賛する京野菜を作り続けてきた重要な役どころ「松陰タエ」を演じていた江波杏子が2018年10月に亡くなるなど数々の番組継続の危機を乗り越えてきた「京都人の密かな愉しみ」は、1月放送の最新作で新型コロナウイルスによる危機を克服した力強い姿を見せてくれそうだ。内容は不明だが、林遣都や吉岡里帆らが出演しているドラマ部分では、彼らの恋が燃え上がることが予告されており、ファンの注目度はさらに増しそうだ。(写真は京都の資料写真ですが、ドラマ「京都人の密かな愉しみ」の「Blue 修業中」シリーズ第4弾「燃える秋」とは関係ありません。イメージです)
 なお、「Blue 修業中」の最新作となる第4弾「燃える秋」の放送は、珍しいことにまだNHKの「京都人の密かな愉しみ」を特集したページには掲載されていないが、12月23日に開かれたNHK放送総局長の定例会見で配られた報道資料で確認でき、定例会見要旨に若泉副総局長の発言としても掲載されているため、当ブログとしても正式決定として記事を掲載する。
 かつて幹事社の放送担当キャップとしてこうした定例会見の司会も務めた経験のあるわたくしの印象では、放送や放送日時、概要は決定事項と思われる。
 さらに最新作の放送に向けて、新シリーズ「Blue 修業中」の「祇園さんが来はる夏」を30分ずつ再構成した短編4本が、1月26~29日の午後7時からNHKBSプレミアムで放送される。こちらは特集ページの再放送予定に掲載済みだ。

★続きは阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます(劇評など一部のコンテンツは有料ですが、ニュース記事はいまのところ無料です)

★放送総局長会見で報道陣に配布された報道資料

https://www.nhk.or.jp/info/pr/toptalk/assets/pdf/soukyoku/2020/12/007.pdf

★短編4本の放送予定の詳細

 2017年9月にスタートした新シリーズ「Blue 修業中」は、放送前に明かされた公式情報の中で「京都の伝統文化を継承し、悩みながらも生き方を模索する若者たちの姿」が描かれることが予告され、第1弾、第2弾、第3弾を通じて、苔マニアで庭師見習いの若林ケント幸太郎(林遣都)、厳しい父のもと陶芸の修業中の宮坂釉子(相楽樹=2019年から吉岡里帆に交替)、天才的な舌を持つ板前見習いの松原甚(矢本悠馬)、パン作りに青春のすべてを掛ける上町葉菜(趣里)、京都のプロたちが絶賛する京野菜をつくってきた祖母タエについて農家修業中の松陰鋭二(毎熊克哉)という友達同士の5人の日々が描かれた。

 第1弾「送る夏」では、京都五山の送り火を背景に描かれ、鋭二がその準備に関わっているという設定のもと、普段なかなか知ることのできない送り火の準備段階も紹介されていた。
 第2弾となる「祝う春」は、厳しく物分かりの悪い師匠の下で悪戦苦闘する4人の若者の奮闘ぶりが引き続き描かれたが、甚の憧れのマドンナの若おかみ(高岡早紀)のもとに、突然家出中だった夫(波岡一喜)が戻ってきてひと波乱起こしたり、クールな鋭二の意外なトラウマが明らかになったりするなどサプライズの要素も。京都の子どもたちにとっては通過儀礼ともなっている「十三(じゅうさん)参り」のユニークな習慣や、京野菜の情報もたっぷりで、「京都人の密かな愉しみ」の世界が深まっていく予感を感じさせた。

 ドラマ部分では、団時朗が演じていたヒースロー教授(あるいは出家僧?)や英国から追い掛けてきた婚約者のコッツフィールド教授(シャーロット・ケイト・フォックス)など前シーズンで活躍していた人々が登場するのかも注目されていたが、「送る夏」では、とりあえずヒースロー教授だけが登場するシーンが挟み込まれて、「祝う春」などでも意外なシーンに登場した。

 第3弾となる「祗園さんの来はる夏」は、1150年の節目を迎えた祇園祭を完全ドキュメント。毎年祇園祭が近づくと恋心ムードになる釉子の恋のゆくえと、笛や太鼓で祇園祭に参加する幸太郎や甚の準備段階も含めた奮闘ぶりを紹介。江波杏子が演じていたタエはドラマの中でも亡くなったかたちに設定され、仲間だけが残った通夜の席で鋭二の秘密が明かされた。甚の恋は相変わらずだった。
 ドキュメンタリー部分では、ドラマにも登場する粽(ちまき)に関する詳しい情報や、祇園祭の細部にわたる裏側の紹介など充実した内容だった。
 来月1月26~29日放送の再放送では、「粽ものがたり」「祇園囃子が聞こえる」「祇園祭のカレンダー」「祇園祭は恋の季節」と4本に分けて放送される。

 「京都人の密かな愉しみ」は2015年1月3日に放送された「京都人の密かな愉しみ」が大きな反響を呼び、8月15日に「京都人の密かな愉しみ 夏編」が放送されたことでシリーズ化。2016年3月19日には「京都人の密かな愉しみ 冬編」が放送された。この時点で視聴者からも業界人からも絶賛する声が相次ぎ、2016年7月、全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が優れた映像作品を選ぶ「第32回ATP賞テレビグランプリ」のグランプリに選ばれた。2016年11月5日にはさらに磨き抜かれた出来上がりの「京都人の密かな愉しみ 名月編」も放送。今年2017年5月13日に放送された「京都人の密かな愉しみ 桜散る」でシリーズ完結となった。
 視聴者からの要望が多いと見え、常盤貴子のシリーズも含め、再放送も何度か行われてきた。

 よく言えば季節とともに生き、悪く言えば慣習に縛られながら京での日々を積み重ねていく老舗和菓子屋の母娘の、各編を超えて連続していくドラマやそこから派生する物語を中心に、京都人たちが日常の暮らしの中で京都の街に抱かれながら体験する物語を描くオムニバスドラマなどで京都の魅力を情緒たっぷりに描く一方、京都生まれの料理研究家、大原千鶴による京料理の調理実演や毎回のテーマに沿った観光にも直結するミニ知識の情報コーナー、京都ならではの体験にNHKのアナウンサーらが臨むコーナー、ドキュメンタリータッチの紹介コーナーなど、実用的な小ネタも織り交ぜ、視聴者をたっぷりと楽しませてきた。

 演出にあたる監督は、映像クリエイターの源孝志。脚本も源が担当している。映画『東京タワー』の監督として知られているが、ほかにも深刻な停電に陥った東京で起きるさまざまな物語を同時進行で描く『大停電の夜に』や、若者群像を描く『アキハバラ@DEEP』など今も熱狂的なマニアが存在する映画をものにしている映画監督で、「17年目のパパへ」や「マイリトルシェフ」などいまだにファンが大切に思っているドラマの演出・脚本も手掛けている。多くのドキュメンタリーでも知られ、舞台演出も。近年は、BSでのドラマなど、じっくりと取り組む上質な作品を立て続けに創り出している。豊川悦司と宮沢りえという魅力的な組み合わせのドラマ「漱石悶々」も源監督の演出である。
 来年2021年1月2日にNHK総合、BS4Kで放送されるドラマ「ライジング若冲(じゃくちゅう)~天才 かく覚醒せり~」も源の作・演出。

 BSプレミアム「京都人の密かな愉しみ」は、そんな源監督の特徴がいたるところにあらわれた作品である。本質を写し取るような美しい映像、深い人物造型、いつまでも続く上質な余韻など、一度見たら心から容易に離れていかない求心力を持った作品を創り出すのだ。

 連続的に続いていくメインのドラマや単発のオムニバスドラマに加えて、ドキュメンタリー、バラエティー、料理・観光などの情報コンテンツなど多くの要素を持った本作が決してごった煮感覚で混乱してしまわず、どのコーナーもそれぞれの空気感の中で存在していることがポイントだ。普通、こんなにさまざまな要素を入れてしまうと、ゆっくりと京都の世界観にひたりたいドラマのファンからはお叱りを受けかねないし、もっと観光などに活かしたい視聴者からは、ドラマの尺を削ってほしいという要望が来てもおかしくない。実際にどのような意見が来ているのかを知る立場にはないが、初回からずっとこうした構成を崩していないところから見ると、双方ともに満足感を与えることに成功しているのであろうと考えられる。
 現シリーズになってからは、オムニバスドラマが放送されていないが、内容が濃く名作が多かっただけに、全体の放送時間を伸ばしてでも復活が望まれる。

 いずれにせよ、今後も「京都人の密かな愉しみ」の世界がさらに広がり、深まっていくことが期待される。

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