見出し画像

ジュニアサッカーママさんから相談されたチーム移籍トラブルについて

 サッカーのヘディングが原因とされた息子の怪我(硬膜下血腫)と、その原因となった脳内の先天性の水溜り(くも膜嚢胞)の発見がきっかけで、2020年11月にオンラインコミュニティフットボールファミリー・ユナイテッドを立ち上げて情報発信を始めて以来、新聞の取材を受けたりオンラインイベントへの参加依頼を受けるようになった。

 コミュニティを立ち上た理由は、

1. ジュニアサッカー現場の小さな声を保護者や関係者へ届けたい
2. 息子のように頭部に先天的なリスクを抱える子どもの存在を知って欲しい
3. ジュニア世代のヘディングのリスクについて知って欲しい

 おおまかにその3点だったので、所期の目的はある程度達成できたのではないかと思う。

 息子の怪我が見つかってからは、関係ありそうな医学論文を読み漁り(友人の医師に論文の信頼性を確認しながら)、ヘディングのリスクや事故について日本で紹介されていない海外記事や論文を翻訳しコミュニティで共有を続けた。

 そして、2015年北米、2020年の英国に次ぎ、2021年5月にJFAからジュニアのヘディングに関するガイドラインが出された。日本でも、子どもの将来を守るための第一歩が刻まれたことを嬉しく思った。

 コミュニティ活動を続けるなかで、たまたま私の投稿を目にして連絡をくださったJFA関係者には息子の怪我の詳細やMRI画像などを共有したけれど、私たち親子の情報提供や発信がどれだけ効果があったかは知る由もない。単なる偶然かもしれない。

 平行して、ジュニアサッカーに関する情報発信で影響力のある友人のサポートを得てコミュニティで呼びかけたアンケートには多くの回答が寄せられた。ジュニアサッカーの現場ではまだまだ改善すべき点が多いことも改めてわかった。

 そしてある日、その友人の紹介で、ある地方のサッカークラブに所属する小学生兄弟のママさんより相談を受けた。簡単に言うと「所属選手に対するチームからの移籍妨害と嫌がらせ」ということになると思う。

 最初に話を聞いたとき、それが小さな子どもを預かるクラブの責任者の振る舞いだとはにわかに信じがたかった。でも、私自身も過去に息子が所属するチームとのトラブルを経験していたので、そのときの経験をふまえ「もっとこうすれば良かった」と思ったことをベースにアドバイスさせていただいた。

 起きたことを時系列にまとめるとこんな流れだ。

 お子さんは2人(小6&小5)、相談を受けた時期は2020年12月ごろ。

・2人は地元のクラブチームに所属していた。お兄ちゃんは海外クラブ系のスクールにも通っていた。

・お兄ちゃんが海外クラブ系スクールのジュニアユース(中学校)のセレクションを受けた(ジュニア時には県トレセンの推薦も受けていた)。

・それを知ったチーム代表者が、お兄ちゃんが自チーム以外のジュニアユースへ移籍するのを妨害するために、当時通っていたスクールへ嫌がらせの電話や突然の訪問を行なった。

・そのチームは2020年の春より、他チームのセレクションを受ける場合(Jユース以外)は退団してからにせよとチーム規約を改訂した(2019年入団時にはなかった)。

スクリーンショット 2021-07-20 14.49.03

・チームの代表者はこのママさんを呼び出し、あなたとお子さんがしている行為はチームの規約違反なので、お兄ちゃんを除名する、小5の弟(彼は無関係なのにもかかわらず)も一緒に除名する、と一方的に言い渡したそうだ。そして、同チームのジュニアからジュニアユースへの切り替わりの時期には(詳細は省くが)チーム内でお兄ちゃんへの嫌がらせが始まったという。

 と、ここまで書いて明らかなのは、このチームは一度入った選手に対してジュニアから同じチームのジュニアユースへ進むことを要求しているだけでなく、セレクションやスクールへの参加に対しても、事前申告や、自チームを常に優先するようプレッシャーをかけている。このチームはJFAに登録し、指導者もJFAライセンスを所持しているにもかかわらず、2017年にJFAから出された、アマチュア選手の自由な移籍に関する通達に反していると言える。

 この代表者は、サッカーの育成や子どもの成長というよりも自分のビジネスを最優先していることがわかる(もちろんそれは自由だが)。

 Jユース傘下のクラブセレクションは受けてもOK(チームのPRになる)なのに、それ以外のクラブチームのセレクションを受けるなら退部しろ、と。

 他クラブのスクールに関しても、事前申告をさせた上で、欠席や怪我により自チームに不利益を生じた場合場合はクビにするぞ、と。

 すごいことを言っている。

 状況から察するしかないが、練習時にも嫌がらせが始まったということは、この代表は他の保護者も巻き込んでいるはずだ。その構図も私が経験したことに近い。

 そこで、私からママさんに伝えたのは以下の点。

1. 感情的にならないで。そもそも相手のしていることは間違っているし、チーム代表という立場を使って周りを巻き込んで子どもを攻撃するような人とは、どんな対話をしてもこちらが消耗するだけだし、子どもも傷つく。

2. これから相手と会うときは音声含む全てのやりとりを記録して。集めた情報はSNSなどで開示しないで保管して。

3. これまで起きたことを時系列にまとめておいて。

 話を聞いた限り、私のような素人がどうにかできる問題ではなさそうだ。かといって法的に訴えるのは金銭的、時間的にも負担が大きい。相談を受けた時点で、このママさんも相手の理不尽な言動や威圧的な態度によって精神的にかなり追い込まれており、小5のお子さんもこの状況が原因で体調を崩し通院していると聞いた。

 だから、時間は少しかかるかもしれないけど、今回の出来事は間違いなくJFAも問題視するはずだから、経緯を全て記録に残してJFAが開設している「暴力等根絶相談窓口」に相談するのが良いと伝えた。

 実は私も以前、息子の所属するチームのトラブルが原因でチーム代表者に威圧的な言動や暴言を受けて、この窓口を利用したことがある。

 そのときのJFAの対応は非常に誠意のあるもので、JFAから任を受けた地域サッカー協会の担当者は、電話での状況の聞きとりや、私が提出した資料を精査の上、そのチーム代表者を呼び出して面談・調査を2度も行い、先方の非を認めてくれた。面談時の内容も丁寧に教えてくださった。ただ私たちのケースでは、この代表者がJFAの指導ライセンスを持っておらず、協会として彼にはライセンス剥奪などの懲罰を与えることができない....大変申し訳ない....という結果に終わった。協会の方はそのことについてもお詫びしてくれたが、当の本人からはいまだに謝罪はない。

 ママさんはこのあと、全ての記録をJFAの相談窓口に提出し、地域の協会の方から連絡があり、このチーム代表と関係者、協会側の担当、そしてママさん(とパパさん)で面談を行ったそうです。

 結果は当然だが、チーム側に非があったことが認定された。お子さんたちが受けた理不尽な行為は間違っていたことが正式に認められたそうだ。

 最終的にどんな懲罰が与えられるかは開示されないようだが、チームでは以前に追加された、選手の移籍の自由を妨げるような規約は外されたとのこと。だからといって、このママさんや2人のお子さんが受けた心の傷は簡単には消えないだろう。小学生年代は保護者が付き添うことも多いので保護者の人間関係についても大きな心の負担があったのではないだろうかと想像する。

 でも、唯一の救いは、この2人のお子さんが、チームを変えて今もサッカーを思いきり楽しめているということだ。こんな理不尽な大人のせいで彼らがサッカーを嫌いにならなくてよかった。それは本当に幸運だと思う。

 もし、これを読んでくださった方自身や、身の周りで似たようなことが起きたとき、ぜひ私たちの経験や、上にあげたアドバイスを参考にしていただければ幸いです。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?