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Bar-Ailes du Diable

ー第3夜ー第1話

あの時、ほとほと疲れていた。
疲れている時ほど何もかもが上手くいかないものだ。
俺が何したってんだ!
仕事では頑張ってきた案件を奪われ、恋人には冷たくされ、ずっと仲の良かった友人にまで裏切られ、ここ最近は変な者に付き纏われている。

これまでのストレスのせいか幻聴までする。

普段ならくだらないと見過ごす様な一枚の紙をじっと見つめる。
その紙は所々薄汚れてボロボロになっている、ある文章が私を誘う様に携帯に指を走らせる。

ーー相談屋ーー

何でも請け負います。ただ話を聞いて欲しい、困っているのでアドバイスが欲しい、探し物を見つけて欲しいなどなど…。
只今キャンペーン中に付き無料で相談OK!
その他霊的なご相談にも承ります、ぜひご利用下さいませ。
※秘密厳守致します

Ailes du Diable ○○○ー○△△○ー○□○△迄 
担当 ヨウマ

いかにも怪しげな広告だったが、弱り切った時の俺には藁にもすがる思いで連絡をしてしまった。
そして教えられた場所に行く。

裏通りのまたその奥にその店はあった。
こんな所に店なんてあったっけ??
そう思いながらも木の扉を開けてみる。

中は薄暗く少しの光だけが灯され、開店前なのかテーブルに椅子が逆さまに置かれている。カウンターの一番奥に男が一人こちらを向いて座っていた。

『ヨウマさんですか??』
『………』

男は返事をしない。
あれ?人違いなのかな??

『まぁ座れ』
『……は、はい』

えっ?この人で合ってるんだよな…。
店内なのにサングラスをしたままの彼に怪しさしかない。
やっぱり相談とか止めておけば良かったのかもしれないとすでに後悔している。

『……で??』
『はい??』

何故か上からの強い口調にムッとなったが、取り敢えず今の現状困り果てている為苛立ちを押さえ込む。

『…実は相談事と言いますか…最近、酷い幻聴と…その…女に付き纏われていまして……』

黙って俺の話を聞く。
鋭い眼光で俺が話している間ジロジロと見返してくる。
何だか気分が悪くなるな、何だって言うんだ。

『…あの!さっきから何なんですか?人の事ジロジロと見て。俺は一応依頼主ですよ?!』

ここまで失礼な態度に俺の苛立ちはピークに達する。

『もういいです!あなたみたいな怪しい人に相談しても埒が明かない!!』

俺は立ち上がりその場を去ろうと歩き出し勢いよく扉を開けて出て行った。


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