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Bar-Ailes du Diable

ー第4夜ー第1話ー

ついに時は来た。
全ての準備は万全、不安などはない。
恐怖すらないのだ。

もう一度あの場所に訪れる時が来た様ね。
裏路地のそのまた奥にひっそりと佇むそのお店。

何十年ぶりだろうか?
また私を受け入れてくれるのだ。

木製の扉が音を立てて開く。

ギィィィィー。


『いらっしゃいませ、お待ちしておりましたミツキ様。ようこそAliesduDiableへ。さぁ中へどうぞ』
『お久しぶりです、マキさん。それに……』

懐かしい顔が、私の目の前でにこやかに笑みを浮かべて立っていた。そして、カウンター席にドッシリ身を沈めてタバコをふかしている男に視線を移す。

『ヨウマさん』

私の声かけに片手を上げて返事する、相変わらずのようだ。
私も昔彼らに助けられたのだ。あの時はもう二度と会う事など無いのだろうと思っていた。

『今日は孫娘の件でお礼をしたくて参りました、そして最後のお別れに』
『左様で御座いますか、それはわざわざありがとう御座います。ですがわれわれは何もしておりませんゆえお礼などとは必要御座いませぬ』
『……もう逝くのか?』

こちらに顔も向けず、ぶっきらぼうにヨウマが少し悲しげな声で呟く。

『はい、これもまた必然ですので。それに私は十分に生きました』

私がここまで幸せに生きれたのは、ヨウマさんやマキさんのお陰なのだ。これ以上何かを望むのは欲深いというもの。

マキさんの手を借り椅子に腰掛けると綺麗な顔立ちの女性が飲み物を差し出してくれた。

『お酒は入っていませんのでご安心を』

ニッコリと笑う女性に勧められ一口口につける。

『美味しです、ありがとう』

ほのかに桃の香りがするノンアルコールスパークリングだ、不思議と心がほんわかと温まり幸せな気分になる。

『あれからもう60年、ここは変わらずですね。本当に懐かしい』
『貴方様も変わらずあの時の純粋なままで御座います』
『まぁ、ふふふ。』

他愛ない話しをしながら私は思い出していた、私が初めてここを訪れた時の事を、もう一度ここに訪れる事になったのかという事を。


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