12月23日-2-
ー光司ー
やっと仕事が終わり気付いたら残っているのは俺だけだった。
コートを羽織り明香がプレゼントしてくれたマフラーと手袋を着け、冷たい雪風の中タクシーを拾う。
『広園台まで』
疲れた体をタクシーの後部座席にグッタリと沈めながら外の景色を眺める。
窓の外は暗闇で人の影もなく白い綿帽子の様な雪がハラハラと降り積もる。
時刻は午前1時を回っていた。
携帯を取り出し留守電やらメールをチェックする。
「新しいメッセージが5件です」
無機質な機会音の声で次々と仕事絡みの連絡に疲れがドッと押し寄せて来る。
最後のメッセージは、俺の疲れた心に癒しをくれる声だった。
「明香です、お仕事お疲れ様です。外は雪が降っていて寒いから気をつけて帰ってね、あまり無理しないで、今日は先に寝ます、お休みなさい」
携帯から聞こえる寂しげなどこか諦めにも似た声に申し訳なさが込み上げてくる。
明香……。
彼女とは大学時代からの付き合いで、気立てがよく誰にでも優しい、いつも明るいそんな彼女は常に友人達に囲まれている人だった。
俺には勿体ない位の女性だ。
最近忙しすぎる俺に対して愚痴を一つもこぼさず、俺の心配ばかりしてくれる、だが最近は少しギクシャクしている。
このままだと終わってしまうんだろうな……。
他人事の様にぼんやりと思った。
2日後のXmas。
この日が2人で過ごす最後のディナーとなる。
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