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よく食べられるスイミー

レオ・レオニ作『スイミー』

一匹だけ身体の色が違うからって仲間はずれにされたスイミーが仲間の危機を機転を利かせて救うストーリー。

どんな魚も稚魚の頃は集団で生活をします。他の魚や水棲生物、鳥や昆虫、両生類や爬虫類に襲われても、その大多数が生き残ればいいので、散り散りになって全滅する可能性よりも、集団でいて一部だけでも生き残る可能性に賭ける。

そして、出来るだけ襲われないよう、大型魚が入って来れない浅瀬や、水草が鬱葱と生い茂るエリア、複雑に積み重なった岩場などを選んで暮らします。

敵から身を守る、そして生き残る最も効果的な手段は『隠れる』ことでございまして、周囲に溶け込む『擬態』を得意とする魚もいます。

芦ノ湖からゲリラ放流によって全国に広がったブラックバスも、研究施設から逃げたブルーギルも、養殖場から逃げたジャンボタニシもウシガエルも、池から流れ出た錦鯉もへらぶなも、入植経緯が不明な草魚やハクレンやコクレン、アメリカンキャットフィッシュやぺヘレイ、いかなる害魚だろうが益魚だろうが、春が来れば産卵して子孫を残します。まごうこと無き自然の摂理そのものであります。

害魚の代表格のように言われておりますブラックバスでさえも安泰かと言えば全くそうではなく、エサがプアな『野池』という環境は逆に苛酷な運命を彼らに突きつけます。

『共食い』

自分の子供を選んで食べてるかどうかまでは分かりませんが、少なからず共食いはします。もちろん食うために産んでるのではありませんし、じゃなきゃ孵化するまでオスがネストを守ったりしません。

理性とか倫理観とか道徳感なんか無い。目の前に食えそうなものが来れば普通に食う。それが魚の習性です。

『アルビノ』

いかなる病気、天変地異、不測の事態が起きても全滅だけは避けるべく、遺伝子にはある一定数のエラーを必ず発生させるプログラムがなされております。

それは自然界で約1割と言われており、単純計算で100匹産まれた魚の10匹は奇形である。

『そんなにいる?』

そうですね、実感は無いです。たまに尾ひれが異常に小さいとか、背骨が湾曲してるとか『奇形』はあっても、アルビノなんてそれこそ見たこともない。

そうなんです。見かけないんです。どの個体よりも目立つ、若しくは敏捷性に乏しい、病気になりやすいため、真っ先に食べられてしまうから。

こんなことを言うと元も子もないんですが、『僕が目になる』と言ったスイミーから狙われる。という重い現実が物語の向こうには存在しているのであります。

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