野良着の技
作務衣はお坊さんの着物ですが、
百性や庶民と共にあった【野良着】。
私の田舎では【山着】【ヤマギモン】と言われています。方言で、畑に行くことを「山へ行く」と表すのでその流れか。
高度経済成長により洋服の入手が簡単になるくらいまで、仕事着兼日常着でした。
「着のみ着のまま」という言葉通り、畑から帰った服そのままで、家でも過ごす暮らしもあったと記録されています。現代では想像のつかない衣服生活がありました。
ここでは、主に上着における工夫をご紹介します。
地域・着た人の好みにより多種多様です。大体の傾向として。
国産生地の使用
主に木綿や麻を使っています。
・通気性がよい
洋綿より太い糸で織られているため、糸そのものや折り目に空間があります。
・丈夫なので労働に耐えうる
家で洗濯できます。90年前以上の大正時代の古布も、よく流通しています。
藍染めされた生地は虫に喰われづらいです。絣生地など、染まっていない部分だけ虫食いがあることもしばしばです。
・縫いやすい
絹などと違い、滑らないので手縫いしやすいです。
・庶民間で流通が多かったので入手しやすい
木綿・麻は庶民の着物でした。一生絹の着物を持てない人も多かったといいます。
貧しい時代は古布で仕立てるのが一般的でした。古布でさえも高価な時代が続いた為、どんな小さな端切れでも捨てませんでした。また、流用しやすいように主に直線裁ちでした。
馬乗り
裾にスリットがあります。
地元の古老は「馬乗り」と言っていました。
・しゃがみやすい
・予め空いているので破れない
身八つ口
着物と同じく、脇も空いた作りもあります。
・換気される
・予め空いているので破れない
着物と同様、男物野良着ではあまり見られません。
かけ襟やかけ袖
汚れやすい衿、擦り切れやすい袖口に
予め別布がついています。
・擦り切れたら簡単に交換できる。
・身頃生地を肌の摩擦などから守れる。
裏地の当て布
肩裏に、布が当ててあります。
・汗の吸収
・肌ざわりの向上
・身頃生地を肌の摩擦から守る
背中にも当て布がなされることが多いです。
・保温性の向上
長袖野良着では、袖先にも当て布されているものもありました。手首が暖かい。
以上はすべて、昔の野良着作者が行った工夫。
日本に生きた人が、改良してきた結果です。
これらを雪中野良着で復元しています。
伝承へのノスタルジーと実用、
どうぞご着用くださいませ。
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