見出し画像

バーにて

「友達がさー、婚活してて、結婚相談所とか言ってるんだって」
「ふーん。成果は?」
「ダメだって。なんか、顔で判断するのもされるのも疲れるって」
「ふーむ。まあ、最初に目に飛び込んでくるのは顔だもんな」
「勿論好みの顔だってのは大事だと思うよ、結婚して長く一緒に過ごすならさ。でもさ、顔以外の要素だって大事じゃんか」
「そりゃ、モデルの面接してるわけじゃないからな」
「同じ集団でちょっと過ごすとわかるよね。顔が良くても意地悪な家族なんか、嫌なだけだし。学校のクラスだって、顔なんか関係なかったような気がするよ。顔が良くても素行不良の奴なんか全然いいと思わなかったし。大学生とかになってくると、精神的に安定してて信頼できる人の方が好感持てたよ。顔が同じぐらい整ってても、真面目な人は地味に見えて、遊んでる人は派手に見えたりね」
「そうだねぇ。顔だけで得する要素って、ただ眺めていい気分になれる、見せびらかしていい気分になれる、子供の顔も良くなる、ぐらいじゃないかな。その他のマイナス要素がそのメリットを上回る時、顔は良くても~って話になるんじゃ?」
「いい顔なだけじゃ、見せびらかしてもいいことないよ。いい顔でも性格悪けりゃ、人前に出せないじゃん」
「そんな危険人物いたの?」
「たとえばの話よ」
「まあそうだねぇ、どう動くかも大事だよね。表情とかも含めて」
「そうなの、そうなのよ」
「じゃあ、その友達の言う顔っていうのは、ただ顔の造作ってわけじゃなくて、やっぱり総合的な要素も含んだ話なんじゃないか」
「そう…なのかもね」
「本当に顔の作りだけで選ぶ人なんかやっぱりいないと思うよ。履歴書に必要なのは顔写真だけじゃないし、面接してみなきゃわからない」
「じゃ、どうして友達は、顔の話なんかしたのかしら…」
「好みの顔の奴がいなかったか、顔が原因でうまくいかなかったって思ってるんじゃないか」
「うまくいかないのは顔のせい…か…」
「服のせい、顔のせい、髪型のせい…もちろん見てくれは大事だし、それを変えたらうまくいくってこともあると思うけどさ」
「そうね…。じゃあどうして、うまくいかないのかしら…」
「どうしてかねえ。世界の七不思議だねえ」
「そうね…」
「君、自分の心配した方がいいんじゃないの」
「だから、友達の話を参考にして考えているんじゃないの。顔はそんなに大事なのかって」
「問題ないなら気にしなくていいんじゃないの?」
「私の顔に問題があるかどうかってこと?」
「ないよ、大丈夫」
「じゃあ、どうしてうまくいかないのかしら…」
「世界の七不思議だねえ」
「真面目に考えてよ!!!」
「それ真面目に考えても答え出ないから…」
「…そうね…」
「とりあえず美味しくお酒飲もうよ。人は今しか生きられないんだから。今出来る事、それは酒を飲むこと」
「バーじゃそれ以外やることないわね」
「じゃボーリングでも行く?」
「爪が割れるから嫌」
「ネイルとかしてないじゃん」
「それでも割れるのよ」
「ふーん。じゃあビリヤードは?なんか好きじゃなかったっけ」
「いいわね。久々に。ビリヤードは好きよ」
「じゃあいこっか」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?