文章を安易に「が、」でつながない。使いたくなったら文を切る合図と心得よ。
「接続詞」って小学校何年生で習いましたっけね。
「が、」は逆接。逆接ですよ。
「順接」のように使われている記事・文章を本当によく見かけます。
【順接〔じゅんせつ〕】
これより前に述べられている内容「原因・理由」、後に述べられている内容「結果・結論」をつなぐ接続詞。
「順接」には次のようなものがあります。
● だから
● ので
● それで
● そのため
● そこで
● すると
ex.)今日は雨が降りそうなので、カサを持って出かけたほうがよさそうだ。
では「逆接」とは何か。
読んで字のごとく、
● 前後の文章が全く反対の意味・状態を表すとき
● 後に述べる内容が前に述べられている内容を打ち消すとき
このような場合に使われる接続詞です。
「が、」は上記2パターンに絞って使うことを強くおすすめしたいのです。
ちなみに、鬼添削にお申し込みくださった方の記事にこうした用法の「が、」を見つけた場合、もちろんバッサリ斬ります。
残念な使い方 ── 例文を用いて説明します
言葉で説明するよりも見ていただいたほうが伝わりやすいので、例文をご用意しました。
まずは「NG例」を挙げ、それに対する改善案を「After」として示します。
接続詞と前後の文章の関係を意識しながら読んでみてくださいね。
例 1. 最もよく見るパターン
NG例)先日『〇〇〇〇』という本を読んだんですが、非常に良い本だったので、あなたにもおすすめしたいです。
After)先日『〇〇〇〇』という本を読みました。非常に良い本だったので、あなたにもおすすめしたいです。
読点(、)で文を切り、接続詞「が、」を削除しました。
それだけです。(もちろん語尾は適当に修正しています。)
適当 = 適切という意味です。
さて。
ここまででハッとされた方は、「が、」を使わないよう意識するだけでもクセは直せます。・・・・・・たぶん。
説明しますね。
NG例)先日『〇〇〇〇』という本を読んだんですが、非常に良い本だったので、あなたにもおすすめしたいです。
この例文は「2つの事実」と「感想」から成っています。
⦿事実① 先日『〇〇〇〇』という本を読んだ。
⦿事実② 非常に良い本だった。
⦿感想(意思) あなたにもおすすめしたい。
冒頭でこのようにお伝えしました。
では「逆接」とは何か。
読んで字のごとく、
● 前後の文章が全く反対の意味・状態を表すとき
● 後に述べる内容が前に述べられている内容を打ち消すとき
このような場合に使われる接続詞です。
「事実①」と「事実②」の関係は、上記に当てはまりません。
● 反対の意味ではない
● 事実②が事実①を打ち消していない
よって「が、」ではつなぎません。
NG例)先日『〇〇〇〇』という本を読んだんですが、非常に良い本だったので、あなたにもおすすめしたいです。
After)先日『〇〇〇〇』という本を読みました。非常に良い本だったので、あなたにもおすすめしたいです。
これが最もよく見かけるパターンです。
例 2. 小学校の学年だよりで・・・
実話です。ただし、文章を少し変えてあります。
NG例)入学してからはや1か月が経過しようとしていますが、子どもたちは学校生活にも慣れ、元気に楽しく過ごしています。
After)入学してからはや1か月が経過しようとしています。子どもたちは学校生活にも慣れ、元気に楽しく過ごしています。
※ 語尾「ます。」が2つ連続しているのは気になりますが、この note での論点から外れているのでスルーします。
同じく、分解してみましょう。
NG例)入学してからはや1か月が経過しようとしていますが、子どもたちは学校生活にも慣れ、元気に楽しく過ごしています。
この例文は「3つの事実」から成っています。
⦿事実① (子どもたちが)入学してから1か月が経過しようとしている。
⦿事実② 子どもたちは学校生活にも慣れ(てき)た。
⦿事実③ (子どもたちは)元気に楽しく過ごしている。
いずれの事実も打ち消し合っていません。
よって、「が、」でつながず、2つの文に分けました。
ところで、読点(、)ごとに分けるとどうなるでしょう?
例)入学してからはや1か月が経過しようとしています。子どもたちは学校生活にも慣れ(てき)ました。元気に楽しく過ごしています。
さすがに稚拙な印象を受けますね。2つが適当でしょう。
NG例)入学してからはや1か月が経過しようとしていますが、子どもたちは学校生活にも慣れ、元気に楽しく過ごしています。
After)入学してからはや1か月が経過しようとしています。子どもたちは学校生活にも慣れ、元気に楽しく過ごしています。
これも割とよく見るパターンです。
例 3-1. 気づきにくいパターン
次の例は挨拶文。
手紙を書く人は年々減っているでしょうね。かくいう私も、最後に手紙を書いたのは何年前だったか・・・。
一方、仕事で取引先に電子メールを送る機会のある方は多いと思います。メールの冒頭に時候の挨拶を付加する方は少ないかもしれませんが・・・。
何かの足しにはなるかもしれませんので、読んでみてください。
NG例)日ごとに暖かくなってまいりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
After)日ごとに暖かくなってまいりましたね。お元気でお過ごしでしょうか。
考えてみましょう。
NG例)日ごとに暖かくなってまいりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
この例文は「1つの事実」と「質問(挨拶)」から成っています。
⦿事実 日に日に暖かくなってきた。
⦿質問(挨拶) お元気でお過ごしでしょうか。
事実と質問は打ち消し合っていません。
なので、やはりこういった場合も「が、」を使わないほうがよいでしょう。
NG例)日ごとに暖かくなってまいりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
After)日ごとに暖かくなってまいりましたね。お元気でお過ごしでしょうか。
※ 暖かくなると調子を崩される方もいらっしゃるようですが、ここでは例外としました。
例 3-2. その「が、」は思いやり由来。許せちゃうパターン
さて、この例では、今までと少し違う見方をしてみます。
先ほど「例 3-1」で取り上げたNG文例。
NG例)日ごとに暖かくなってまいりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
だんだん暖かくなってきているということは、春先の挨拶ですね。
では、もう1つ例文を見てみましょう。
例)日ごとに寒さが厳しくなってまいりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
同じく「が、」を使った挨拶文例です。
だんだん寒さが厳しくなってきていることから、初冬の挨拶であろうと推察されます。
この初冬の挨拶文を、私はNG例文として扱いません。
なぜだと思われますか?
例)日ごとに寒さが厳しくなってまいりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
この例文は「1つの事実」と「質問(挨拶)」から成っています。「例 3-1」と同じですね。
⦿事実 日ごとに寒さが厳しくなってきた。
⦿質問(挨拶) お元気でお過ごしでしょうか。
事実と質問は打ち消し合ってはいません。
これも「例 3-1」と同じです。
だから「が、」は不適当である。
・・・と結論づけるのは、ちょっと待ってくださいね。
一般的に、寒くなると体調を崩す人が多いです。
この手紙(文章)を書いた人は、手紙を送る相手が寒さで体調を崩していないか心配しているのでしょう。
⦿事実 日ごとに寒さが厳しくなってきた。
⦿推察(心配) 風邪を引いて体調を崩しているのでは。
⦿質問(挨拶) お元気でお過ごしでしょうか。
例)日ごとに寒さが厳しくなってまいりました(。体調を崩しやすい季節です)が、(風邪など召されず)お元気でお過ごしでしょうか。
こうした考えから、「この例文に見る『が、』の使い方は適切である」と結論づけたいのです。
ことり的まとめ
「それなら日ごとに暖かくなってまいるほうの例文もOKなんじゃ・・・?」
そう思われますか?
そうですね。思いやりのこもった手紙を受け取ったら、ただただ喜びをかみしめればよいと思います。
そんなこといちいち言われなくても、もらった手紙に対して、文法がどうとか文章がどうとか、そんな細かいことは気にしないでしょ?
(イヤな手紙だったら違うでしょうけれど・・・。)
私は「校閲の鬼」を名乗っていますが、ひと様から頂いた手紙にまでダメ出しをしたりはしませんよ、もちろん。
なので、こわがらないでメッセージ下さいね。温かいメッセージは執筆へのエナジーになります。
私のnoteをお読みいただきありがとうございます。この情報が少しでもあなたのお役に立てばうれしいです。 皆さまのご支援のおかげで、より良い執筆環境が保たれています。これからもよろしくお願いいたします。