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あの子の猫

去年の暮れぐらいだったか、本格的に寒くなった12月の話。

とある人物から連絡がありました。

「猫が死んだ」
と。

2つ上の子なんですが電話の通話だけでも声が上ずって取り乱してるのがわかるぐらいでまあ酷く泣いてるんだなと思いボクは呼ばれて自転車をその子の家に向かわせたのです。
会ってみたらもう目が開かないくらいに泣きはらしてたようで、しかもお酒もかなり入っていた様子でした。

そこから親父さんに頭を下げながら家に上がり、色んな話をしたのですがその子が泣きながらこう言ってました。

「人間は信用ならんけど猫は信用できるから。」

…そんな時に電話をかけられるボクは猫だった( ・᷄ὢ・᷅ )ムム…?
と冗談はさておき、人間は信用ならないというのはボクにも凄くよくわかる話で。
人間は裏切るし嘘はつくし。
知り合った時はお互いに子供だったのですが人間不信という点で意気投合している不思議な関係でした。

話を戻してその子の飼い猫はその子にしか懐かない猫ちゃんだったので元気だった時もボクが構いに行ったら猫パンチをもらったりしたような記憶があったりと気難しい猫の事を思い出して「多分あの猫もこの子のことしか信用しないんだな。」

とふと思い、ああ…似た者って動物でも人間でも集まるんだなぁ。となにか腑に落ちた気がしたのでした。

その後は猫の毛で人形を作ってくれる業者さんを一緒に探したりしたのですが缶チューハイをグラスについでる時に「猫がいなくなったらどうしたらいいかわからない。」と言うその子に「寂しい時は一緒におるよ」とか「自分は信用して欲しい」とか気の利いたセリフも言えない自分が情けなかったのでした。
弱い人間です。
わかったような顔をしてても綺麗事の一つもかけてあげられないんですから。

だからあの子の本当の事をわかってあげられるのは猫だけなんでしょうね。
ボクはその子の猫という大丈夫になれなかった。
猫になれたら、傍にいてあげられるのに。

だからせめてお酒ぐらいは付き合おうと借りてきた猫みたいにボクはその日は夜中まで泣きはらしたその子の話をウンウンと聞いていたのでした。

猫の動画をお昼ご飯を食べたあとに見てたら、そんなことを思い出しました。

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