ヤンキー

僕は北関東のとある観光地N市の生まれである。

高校はN市から電車で25分のK市にあった。

僕が通っていた高校は県内では一応、進学校という事で通っていた。

校風はいたってまじめであり、そんなに脱線した生徒はいなかったが、周りの高校には脱線した人が沢山いた。

僕の通っていた高校はそういう脱線した人々の格好の標的だったのである。

入学初日の帰り道、N市の同じ中学から一緒に進学した友達が2人いたので、彼らと一緒にボックス席(田舎の電車によくある四人掛けの向かい合った席)に座っていたら、窓に何かコツコツと当たる音がする。

その日は雨だったが、季節はもう春である。まさか雹が降ってきたわけでもないだろうと、外を覗いてみると、反対側のホームからヤンキー達が紙コップで出てくるタイプの自動販売機で購めたジュースの氷をこちらに向かってせっせと放っていた。

ある日の帰りには、ちょうど僕らの電車がN市の駅に着いた時、たまたま天皇御夫妻が東京へ戻られるのに特別列車に乗り込むところに出くわした。(こういうのがN市らしい)

その光景を見ながら友達とふらふら歩いていたが、三人並んで歩いていたうちの真ん中にいたA君が奇声を上げ、いきなり飛び上がった。

色々、大丈夫かと心配になったが、なんてことはない彼はいきなり後ろから歩いてきた工業高校のヤンキーに蹴り上げられたのである。僕は心底、左を歩いていて良かったと思った。

しかし後日、その工業高校のヤンキーに僕も絡まれた。

朝、駅のホームを歩いていると、後ろから足をつんつんしてくる奴がいる。振り向いてみると例のヤンキーである。彼は朝(6時)から猛り狂っており、僕の名前を執拗に聞いてくる。その間も後ろから僕に密着し、凄味を利かしながら足をつんつんしてくる。しかも隣を一緒に歩いていたA君は早足でスタスタと僕を見捨てて、電車に乗ってしまった。

僕は早朝から絶望的な気持ちになった。

1車両目に乗っても、まだ名前を執拗に聞いてくるので、無視して、2車両目に移ると、なぜか彼はそこからは来れないらしく、「なんだよぅ」と小声でつぶやき、行ってしまった。

2車両目に来ると先程、僕を見捨てたA君がニヤニヤと座っており、本気で殺意を覚えたが、彼が先日、理不尽に尻を蹴り上げられた事を思えば、許さざるを得なかったのである。

その後、学校の朝礼で僕の高校が周囲のヤンキー達から標的にされているので、注意するようにとの話があった。

下校する時、ふと何気なく横を見ると、制服はズタズタ、顔には青痰を作り、目はうつろ。明らかに暴行されたであろう僕の高校の生徒がふらふら歩いていたので、僕たちはびくびくしながら、1時間に2本しかない電車にいそいそと乗るのだった。


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