鼻血

中学校生活最後の試合。

地域最弱だったうちのサッカー部は案の定、前半で既に10点差以上つけられて負けていた。

ハーフタイム、「せめて1点くらい取り返せ!!」と熱心に皆を鼓舞する顧問のうわずった声も上の空、僕は全く別の事が気になっていた。

キックオフ直後から出だしたA君の鼻血がまだ止まっていなかったのである。

その時点で既に結構大きいゴミ袋には半分以上、血染めのティッシュが捨てられていたが、A君の鼻からはとめどなく血が流れ、それは素人目に見てもかなり不安になるほどの量で、しかも全く止まりそうになかった。A君は元々、控え選手だったので、試合に出る事にはなっていなかったが、出たら大変になるであろう事は一目瞭然だった。

後半が始まり、ほとんど攻めに転ずることもなく、フルボッコ状態だったので、顧問も諦め、せめて最後の思い出づくりにと今までずっと控えだった選手達をピッチに送り出し始めた。

試合も終盤、ついにA君もピッチに登場した。

僕は鼻に詰め物をして登場した彼を見て、よもや出場する事はないだろうと高を括っていたところに、不意打ちを食らい、まだ鼻血が止まっていない事にもひどく動揺してしまい、僕をマークしていたディフェンダーの足を思い切り高らかに蹴り上げ、生まれて初めてイエローカードをもらうこととなった。

そのまま物の5分もしないうちに試合終了、ベンチに戻ると、あの結構大きいゴミ袋に満杯の血染めティッシュである。その量を見てむしろこちらが卒倒しそうだったが、A君は慣れたもの、特に騒ぐこともなく帰宅していった。






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