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品品喫茶譚 第58回『広島 ふたたび、みたびG線 独演会の日なのにしゃっくりがとまらないのこと』

藤井と二人、朝の広島の街をふらふら歩く。
二日目の朝もG線から始まった。
モーニングを仲良く食し、夜からお店の営業のある藤井と別れる。サングラスをかけ、颯爽と尾道に帰っていった。
今日の夜は横川の本と自由で独演会である。
昨晩、藤井と二人痛飲した酒の余波で、しゃっくりが定期的に出る。大丈夫だろうか。いやもちろん大丈夫ではない。両耳に人差し指を突っ込む。ペットボトルを明後日の方向に傾けて水を飲む。延々、息を止める。といったありとあらゆるしゃっくりを止める手段を繰り返す。なんて間抜けなのか。とまったり、またでたりする。

夜までの時間を喫茶店に行くことに費やす。
昨日、電気系統でトラブり臨時休業していたシャモニーモンブランも今日は元気に営業中だった。
二階にあがり、窓際の席に陣取る。あさりのスパゲッティを注文する。すぐにスパゲッティが出てくる。勝手にボンゴレビアンコを想像していた私の斜め上を行くシャモン(シャモニーモンブランを私なりに約す)。運ばれてきたのは全然違うスパゲッティであった。とても美味しかった。いい店だと思った。
アカデミイ古書店やパルコなどを冷やかしつつ、広島のアーケードを歩く。平和記念公園を横切り、御世話になったフリップミュージック跡地、ヲルガン座などを見ながら歩く。近くにあったパルコという喫茶店ももうない。
前回広島を訪れた際に気になっていたエイトという喫茶店に入る。入ったのだが、テレビはついているもののお店の方の姿が一向に見えない。すいませーんなどと、か細い声を上げてみるものの、反応はなく、このままではただ不法侵入した奴みたくなっている気がして、店をあとにする。次は行きたい。
しばし平和記念公園のベンチにてぼうっとする。ひっきりなしに人が訪れている。厳かな気持ちになる。昼下がりの陽気に眠気をもよおす。

改めて宿に戻り、ギターを持ち、横川を目指す。
チンチン電車。だめ! 混んでいる。ギターとトランクではちょっと乗れそうにない。バス。だめ!だめ! むっさ並んでいる。ということで、さんざ逡巡した挙句、時間が迫っていることもあり、タクる。とても楽だった。
店に着き、リハをする。声は出ないが、しゃっくりは出る。耳に人差し指、不自然な無呼吸。急遽、近くのカラオケに入って声出しをする。結果的にこれがさらなるしゃっくりを誘発する。調べると痙攣しがちな横隔膜を大声などで刺激するのが一番ダメらしい。馬鹿のようにジョッキでウォーターを摂取することで、なんとかおさめる。不安が残る。

ライブが始まる。ゆっくり歌う。大丈夫。しゃっくりは出ない。大丈夫。できる。
ゆったり歌う。じっくり聴いて下さる。
歌を聴いてくれて、ありがとう。
結局最後までしゃっくりは出なかった。
これが本物のシンガーである。

翌朝、またG線に行き、モーニングを食した。昨日は半熟だったベーコンエッグが今日はしっかり焼かれていた。
どっちも好きよ。

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