ギア

生まれて初めてバンドでライブをしたのが2007年。今はもう無くなってしまった高円寺ギアというライブハウスだった。

ゴーイングステディーという当時、僕たちが好きだったバンドがライブをしていたという理由でこのライブハウスを選んだのだった。

メンバーは僕、mixiで出会った藤原、ヤフーブログで出会った菅原、その菅原がどこかのネット掲示板で見つけてきたサポートドラムの田中(偽名)。

ボーダーソックスというバンドである。

薄暗い階段を下りていくと、革ジャンを着ている人やよくわからない人が沢山おり、あまりに今までいた生真面目な世界と人種が違いすぎて、とにかくおっかなかった。その上、接客業であるにも関わらず、お店の人達も全員、まんべんなく態度が悪く、持参していたしょうもないデモ音源をその場で大音量でかけられたりと、とにかく色々恥ずかしかったが、とりあえず出演できる事になった。

一回目のライブは散々だった。お客さんも当然いない。

二回目のライブ、三回目のライブと続けていくもお客さんを呼べないからノルマも高く、おまけに対バンの人は大体おっかない。時には、高校生パンクバンドのついこないだちん毛が生えた様な坊主に「このじゃがいも野郎が」と罵られたりした。

ある日のライブでは、当日までライブハウス側でブッキングが埋まらず、僕らともう一組しか決まっておらず、おまけに両方、一人たりともお客さんを呼べなかったために無人のフロアに向けて熱唱する羽目になり、19時に始まったライブが精算を含め、20時には終了し、家路につくという事もあった。

それからメンバーも少し変わったりし、細々と続けていたが、ついにその当時リードギターをしていた高校生が「受験なので辞めます。」と言ったのを皮切りに栄養士の専門学校生だったドラムも「それなら僕も辞めます。」と便乗し、結句、僕は独りになり、バンドは解散した。

解散前の最後のライブも高円寺ギアであった。

最後に対バンしたのが「後追い自殺」という縁起の悪そうなバンドだったが、それも今となっては良い思い出。


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