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品品喫茶譚 第66回『京都 河原町 路地裏の喫茶店』

旧立誠小学校跡地に造られた大資本ホテルの裏手の路地にエレファントファクトリーコーヒーがある。数年ぶりの来店である。
階段をのぼり、ドアを開けるとテーブル席は満席。窓の目の前のカウンターに座る。
私はこの店の造りを見ると移転する前の1003(神戸の古本屋)を思い出す。疫病の蔓延以来、神戸に行けていないので、また時間を作って遊びに行きたい。かの街には、訪れることができないうちにもう会えなくなってしまった人もいる。神戸が遠い。
アイス珈琲とチーズケーキを食する。まるで夏のような天気である。開け放たれた窓から入ってくる風が生温い。ホテルの裏手が見える。誰もいない。氷がカラカラ鳴った。チーズケーキの甘さが珈琲の苦味によく合っていて、美味しかった。
店の下の飲食店は工事中で、ちょうど休憩中なのか、路地に作業員の方々がめいめい腰を下ろしていた。この暑さでは作業は大変だろう。汗と埃が舞っている。
路地にはあなたが想像する三倍の太さのタイヤがついた自転車がとまっている。タイヤの太さに反比例して、あなたが想像する三十倍は小さいカゴが前についている。フレームにはステッカーだ。あなたが想像する三百倍は珍妙なステッカーである。
梅雨の中休みにて。

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