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品品喫茶譚 第59回『東京 下北沢トロワ・シャンブル 古書ビビビで三年四か月ぶりに独演会をする』

最後に下北沢古書ビビビでライブをさせてもらったのが2019年末だったから、私が店のステージに立つのは実に三年四か月ぶりのことになる。
今回はビビビ店主のご厚意により人数を絞っての開催となった。チケット予約のメッセージ欄に「待っていました」とか「ずっと楽しみにしていました」とか書いてくださる方もいて、予約はすぐに埋まった。
疫病による難しい状況が完全になくなったわけではないけれど、少しずつまた頑張ろうと思った。嬉しかった。
20時15分、ぽつぽつお客さんが集まりだす。店主曰く、私のライブの日に雨は降ったことがないらしかったが、当日は雨だった。バックヤードで待機させてもらう時間も三年四か月ぶり、この独特の緊張感も、本棚越しに感じるお客さんの息遣いも、すべてが懐かしい。
20時30分、店の照明が暗くなり、いつものように楽譜をもってステージに向かう。この緊張感はビビビ独特のものだ。ギターを抱え、チューニングをし、歌い出す。喋り出す。嬉しくてついつい饒舌になってしまう。お客さんはゆっくり聴いて下さる。ステージから後ろのほうを見渡すと、カウンターで店主が聴いて下さっているのが見え、緊張する。
一時間半ほど歌わせてもらった。新しい曲も、ニッチな曲もやった。
店内に残る人や、スッと店を後にする人、各々が各々のペースでライブを共有してくれる。久しぶりにお会いする人も沢山いた。嬉しくてしょうがなかった。本人が一番楽しませてもらった。
聴いてくれて本当にありがとう。

ギターを背負って、傘をさす。夜の下北沢。私が東京を離れてしばらくしてから新しくなった駅舎に慣れることはまだないが、古書ビビビから駅までの道には愛着しかない。富士そばを食べて、宿に帰る。
翌日は群馬・前橋でライブだった(めちゃくちゃに楽しい時間だったが、この日のことはまた後日)。
夜、東京に戻り、下北沢で又吉さん、トニーフランクさんとお会いする。私が知っている芸人さんは皆さん物腰が柔らかく、優しく、いつもお会いすると朗らかな気持ちになる。もちろん日々は戦いの連続であり、それは何も誰に限ったことではないのだが、前線でいつも戦い続けている方々とお会いすることは、とても励みになり、刺激になる。こういう時間があるからまた頑張れるというか、こんな豊饒な時間を一緒に過ごさせてもらえることが本当に嬉しい。

(一日時間が飛ぶ)

翌々日はオフであった。久しぶりにトロワ・シャンブルへと向かう。
階段の下に青年が四人並んでいるような、いないような体でずらっと横並びになっていたので、思わず連れが並んでいるんですか?と尋ねると、いえ並んでいませんとのこと。その質問を機に彼らはそこを離れていった。
一番奥の席に座る。奥の方はちょっと個室めいた造りになっていて、いつも先客がおり、最近は座れることもなかったのだが、この日はたまたま空いていてラッキーだった。いつ見ても西村宣造という方の道化の絵がとても素敵だ。
トロワ・シャンブルに来ると、いつも自分の中で巻き起こる問題があって、それはこの間はニレブレンドにしたのか、カゼブレンドにしたのか、分からなくなるということだ。
私は店を訪れる際、交互に頼むようにしているので、いつもこの問題に直面することになる。もっとも、いつも前回どちらを頼んだのか分からなくなるので、かなりアバウトなルールではある。
もちろんどちらのブレンドも美味しいので、ほとんど意味のないルールなのだが、一応毎回気にしている次第である。
で、思い出したのが、去年の春に受けたテレビブロスのインタビューで、私はこの日、古書ビビビから下北沢の思い出を話しながら街を歩き、最後にトロワ・シャンブルに行ったのだった。暑かったのか、アイスコーヒーを頼んだことを覚えている。なるほど。じゃあこれは一度リセットということでいいんじゃないかと思い、カゼブレンドを注文した。次はニレブレンドである。忘れそうになったらこの記事を見ればよい。
今年最初の東京だった。
次回も東京の喫茶店のことを書こうと思っている。多少、日程が前後したり、混じりあったりするけども、気にしないでほしい。再見!


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