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品品喫茶譚 第39回『北九州 小倉 夜の小倉と記念館』

ラーメンを食べたものの、なんだかまだお腹が物足りないというのが、私と彼女の間の一致した見解であった。と、急に彼女が出てきたわけであるが、私はこの日のイベントのチケットをちゃんと二枚当てていたのである。あとになって聞いたところによると、結構倍率が高かったそうで、ピンポンさん、よく当たりましたねえと吃驚されたのだった。
さて、資さんうどんに到着した。昼間にこの店の前を通った時点で、おそらくどこかのタイミングで入ることになるだろうと思っていた。まんまとそうなった。この店ではごぼう天うどんが有名なようだったが、私はかき揚げそばが食べたかった。しかし注文するともうかき揚げは売り切れだった。早く次のプランを考えないと、店員さんを待たせてしまうことになる。この店は一見、セルフサービスシステムを採用していそうな雰囲気でありながら、席に店員さんが注文を取りに来るのだ。一度でも資さんうどんに行ったことがある人ならば、私の言わんとしていることがよくわかるはずである。さて、かき揚げがないので、私は大いに焦った。そして、結局とり天そばを注文することになった。この店でうどんを頼まないのかと思われるかもしれないが、私は昔からそば派である。食欲の面でうどんがそばを上回ることはなく、きっとこれからもないだろうと思う。蛇足ついでに言うと、私は肉の中では鶏肉がベストフェイバリットである。
結構なボリュームだったそばをちゅうちゅうすすっていると、ツイッターにDMが届いた。昔、ガケ書房で働かれていた梅野さんからだった。いまは北九州に住んでいるらしく、私のツイートを見て偶然同じイベントに行っていたことを知り、わざわざ連絡をくださったのだった。わざわざ資さんうどんの前まで来てくださった梅野さんに少しだけ小倉の街を案内してもらった。こういったつながりが嬉しい。

夜も更けてきたころ、連絡をもらい、繁華街方面を目指す。キャッチがそこら中にたむろし、若者たちが男女問わずうろついている。信号を渡った繁華街の入口で誤って蹴とばした空き缶が若者たちの方へ転がっていく。速足で通り過ぎ、スマホを頼りに指定されたバーを探す。おっかないのと、道が分からないので、軽くパニクり、話しかけてきたキャッチの青年に助けを求めた。青年は懇切丁寧に教えてくれた上に、そんな懇切丁寧に教えたにも関わらず、元来た道を戻ったり、かと思えば、明後日の方向へぬらぬら歩いていく私を心配して、わざわざ追いかけてきてくれた。青年によると、初めに彼に道を聞いていた場所から徒歩二秒、なんなら斜め前の店が目的のバーだったのである。ご親切にありがとうございました。思わず感謝の意を伝えると、青年は笑った。随分若いように見えた。
バーに入って、二階に上がる。見知らぬ街で久しぶりにお会いした人たちと飲んだ。いろいろな話をした。店を出る頃にはもう三時近くになっていた。酔いを醒ましながら小倉の街をホテルへ向かって歩いていく。みんな本当に優しかった。私は改めて、売れたい。心の底から売れたいと思った。良い夜だった。

翌朝は記念館という喫茶店に行った。店に入ると、ママがちょうど準備をし始めたところらしく、開店時間までは少し早いようだった。しかしママは快く我々を招き入れてくれ、珈琲を飲むことができた。ママは旅人でもあるようで、どこかこうローンウルフ(西村賢太的)の雰囲気をまとっていた。我々が京都から来たというと、結構、京都のことをディスったりもしたけれど、特に腹が立つようなことはなく、楽しい時間だった。

帰る前に下関によって少しだけ喫茶店に行ったけれども、もはやここまで。

来週は福井の喫茶店について書く。

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