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品品喫茶譚 第67回『京都 出町柳 再びゴゴ』

二十三時過ぎの終バスに乗って、源湯を目指す。
源湯の近く、大将軍のあたりはかつて私が京都に来たばかりの頃、みうらじゅんのマイ京都慕情を訪ねる旅(旅というほどでもないが)で訪れたことがある。
乗客もまばらなバスを降り、寝静まった住宅街を歩いていると、遠くに源湯の灯りが見えてきた。建物に近づくにつれ、中から若者たちの声が聞こえてくる。そこに確かに聞き覚えのある古本屋・弍拾dB藤井の声を聞き取る。今日からスリーデイズ、源湯の休憩スペースみたいなところで、出張弍拾dBが催される。
律儀に初日に訪れた私は、その盛況ぶり、若者たちの多さに少し気圧されながらも藤井とべしゃり、本日が先行発売の初日である藤井編『新編伊藤茂次詩集』(龜鳴屋)を購った。
端っこの席に陣取り、銭湯の番台で恋人に購ってきてもらったサイダーやひやしあめをちびちびやりながら、気づけば深夜一時。いよいよ店仕舞い、お客たちが順繰り引き上げるあとも居残り、多少片付けの真似事などした。源湯の二階にある古道具屋「あきよし堂」店主と源湯のスタッフの方、藤井、私と恋人でもって、近くのラーメン屋に夜食を食いに行った。夕飯をしこたま食って、腹はくちきっていたものの深夜のラーメンは背徳の味、頗る美味しかった。

翌日。昼下がりにまた藤井と合流し、昨年の今頃も確かそうだったような記憶があるが、やはり出町柳「ゴゴ」に茶をしばきにいく。与太話に花を咲かせながら、藤井はハムサンドとアイス珈琲、昨晩と同じように自室にてしこたま飯を食ってから来てしまった私はアイス珈琲をちゅうちゅう啜る。
店を出た後はこれもまた前回同様、善行堂へ向かう。百万遍の緩やかな坂を四方山話をこねくり回しながら登っていく。店に着いて藤井がドアを開けると店主の山本善行さんがすぐに気づいて話しかけに来て下さる。久しぶりの再会であるところの二人の話にときたま混ざりながら棚を見る。各々、古本を購い、来た道を戻る。
百万遍交差点の近くにある「ホームタウン」という喫茶店に入る。一日目は大盛況だった出張弍拾dBだが、二日目は雨予報だったこともあり、しきりに客足を心配していた藤井である。この時点で薄曇り、おぼつかない空模様ではあったが、夜もひどい雨にはならなかったし、おそらく天気とはあまり関係なく、二日目も大盛況だったようだ。
自室に帰って横たわり、伊藤茂次詩集をパラパラめくる。藤井は私がどうでも良い話を忌憚なくできる数少ない友人で、活躍していることを素直に喜べる稀有な存在でもある。
本当にそうなのかは置いておいて、ぼんやりしているのが二人の共通点だ(凡夜READING CLUB)。
きっと来年もこんな日があるだろう。

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