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品品喫茶譚第38回『北九州 小倉 紫留来からソレイユホール、動物の多い公園まで』

紫留来を出て、小倉の街を歩く。
小倉駅から続く目抜き通りの上をモノレールの線路が走っている。ちょうど平和通りという名前の駅の下を通り、アーケードに入る。アーケードの入口には「記念室」という喫茶店があった。
お腹がくちていたこともあって、ここには明日の朝に寄ることにし、アーケード街をそのまま進んだ。資さんうどんという24時間営業のうどん屋が妙な迫力を持って佇んでおり、何だかパワースポットめいて見えた。
知らない街のアーケードではドラッグストア、コーヒーチェーン、ドンキホーテなど、どの街にでもあるような店の隙間にふっとその街特有の面白い店を見つけることがある。そんな店に出会いたくて、とにかくずんずん歩く。
縦横無尽に迷路のようなアーケードを抜け、駅から北東へ進んでいく。途中、旦過市場近くのブックオフを冷やかしたりしているうちにチェックインの時間が段々と近づいてきた。

大きな橋を渡った先に北九州市立文学館があった。文学館のスロープから、さっきまで自分がいたアーケードの方を見やると、一羽の鳶が旋回しているのが目に映った。鳶のうしろには豪奢なタワマンが建っていて、マンションの高層階に住む人にはあの鳶が目線のすぐ先に見えるのだろうか。鳶が自分の目の高さを飛ぶ景色ってどんなものだろうかと思った。
最近、文学館で常設を観て、昔の図録を購うのが私のマイブームなのである。
ここでは火野葦平展図録と、文学館が独自に出版している北九州市立文学館文庫の火野葦平『革命前後』を購った。近いうちに私はこの連載とは別に文学館の文章をものそうと思っているのである。

文学館を出て、歩いているうちに風景がどこか郊外めいてきた。地図アプリによると、もうすぐホテルに着くらしい。
ていうか、そもそもなんで私が小倉にいるのか、というと、18時半から北九州ソレイユホールで催されるイベントを観に来たのである。出演者はピース・又吉さん、クリープハイプ・尾崎さん、パンサー・向井さん。私の予約したのはなんとソレイユホールに直結したホテルだった。まるで出演者のようである。時間までしばし部屋で休む。
ホテルに向かっているとき、開場時間までにはまだ数時間あったにもかかわらず、ホールの入口には少し列ができていた。開場時間を沢山の人達の中で待つのは、できたら避けたい。とにかく気が急いてそわそわし、尻がむずむずしてしまうのだ。
幸い、ホテルからホールへは徒歩数秒。開場時間を少しく過ぎたころ、ホールへ向かった。スタッフさんの入場整理も迅速だったのか、非常にスムーズに入場することができ、ほっとした。

開演。
まず又吉さんが一人で登場。なんだか久しぶりに渋谷∞ホールでの「実験の夜」みたいで嬉しくなった。数本の朗読ののち、向井さん、尾崎さんが登場し、三人でトーク。休憩を挟み、第二部は尾崎さんの弾き語りから始まった。自分が弾き語りをしていることもあって、弾き語りを観るのは好きである。もちろんただただ観客として、というわけにはなかなかいかないが、好きだ。この夜の尾崎さんの歌はとてもグッとくるものがあった。観れて良かった。

会場をあとにして、夕食を食べに街に出た。言い忘れていたけれども、ホテル近くの公園はちょっとした見ものだった。
キリン、象、ライオン、シマウマ、そして龍。
砂場には大きなクジラの骨格の遊具。こんな公園が近くにあったら思わず歓喜し、通ってしまうだろう。本当に豪華な公園だった。テンション爆上がりでシマウマの背に乗る。象の足を掴む。クジラの背骨に駆け上がる。この時点ですでにホールの周りには人影がなくなっていた。来場者のほとんどが車で来ていたこともあるのかもしれないが、この引き際の素早さは結構すごかった。
小倉の街をあれこれ歩き回って、結局、昼間に目をつけていた紫留来近くのラーメン屋に入った。
豚骨ラーメンを注文し、トッピングの紅しょうがをしこたま取る。紅しょうが、がり、ねぎ、天かす、福神漬け。セルフで入れられるトッピングを欲をかいて沢山取るのが昔からの私の悪癖である。トングを最大限に開き、一度に沢山拾おうとするのも浅ましい。ラーメンは美味しかった。
平和通り駅の下を通って、アーケードに入る。
資さんうどんが見えてきた。

来週へ続く。

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