鳳飛
鳳飛。
と書いてほうひと読む。
放屁。
とは関係がない。
京都は北大路堀川にある中華料理屋である。
私はずっとこの店に行ってみたかった。
最初に興味を持った理由は?
そう、ご名答。
やはり屁を連想したのだった。
そもそも、私の家系は屁の話が好きである。
母方の祖母は特に屁の話が好きで、自分でも屁をよくこくし、人の屁の話が大好物である。
よって、私もそういう血を受け継いでいる以上、当然、屁が大好物である。
鳳が飛翔すると書いてほうひと読めば、人が屁をこく事もまた、ほうひという、この日本語の難しさ。
私が日本語を好きな理由の一つである。
ちょっとニュアンスは違うが、中学生の頃、カナダ人の英語の先生がこういう話をしてくれた。
「キンキキッズ」の事を最初、「変態少年」だと思ったという。
キンキ=近畿であるわけだが、英語ではキンキー=変態と訳せるわけである。
これもまた言葉の妙がなせる技。
中学生ながら感心したものである。
さて、念願の鳳飛。
油臭い町の中華屋(そういうところが私は大好き)という勝手な私の想像と違い、リフォームしたのか、店内はとてもきれい。
きれいすぎるほど。
18時頃行ったらすでに満席。
前に一組の老夫婦が待っていた。
最初に献立とメモを渡され、待っている間に注文を済ますシステム。
この時点で、餃子、シュウマイ、焼き豚は売り切れ。
とりあえず、焼きそば、唐揚げ、チャーハン、カラシ鶏を注文。
混んでいるため、料理のまだ来ていないテーブルも多い。
取り分けの皿と人数分のたくわん、箸だけが並べられたテーブル、今か今かと料理が運ばれるのを待っている。
私はこのたくわんを料理が来てから食べるか、場つなぎに今食べるかで煩悶していた。
腹が減った。
お口が寂しい。
とはいえ、たくわん一枚、箸でつまむのも貧乏くさくはないか?
さんざ悩んだ挙げ句、たくわんを口に運ぶ。
ポリポリと味気ない音を出していると、一品目の唐揚げが運ばれてきた。
想像とはちょっと違う唐揚げ。
というよりは揚げ鶏。
美味。
二品目、三品目、チャーハン、焼きそば。
モグモグ。
ズルズル。
うまい。
パラパラのチャーハンに、あんかけの焼きそば。
最後に出てきたのは、一番食べてみたかったカラシ鶏。
ちょっと酸味の効いたたれ、辛い。
しかし、箸が進む。
うまい。
感じている辛さ以上に汗がどんどん吹き出してくる。
垂れている。
したたっている。
恥ずかしい。
サウナに入って来たかのごとく汗を垂らしながら御勘定。
外にでると、まだまだ寒い。
汗が冷えて、より寒い。
自転車を全力でこぐ。
暑いのか、寒いのか。
よくわからなくなって家路につく。
家について一安心。
くつろいだ瞬間、ブっと屁が。
その瞬間、夜空の彼方に火の鳥が飛び立っていくのが見えた。
ってのは嘘でっす。
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