夢など

小学校高学年の頃から、僕は芸人になりたいと思っていた。

幼馴染のK君と形だけのコンビ(くねくり)を組み、自室の学習机の抽斗の誰にも見えない所に「芸人になりたい」と書いたりしていた。

高校を出たら上京し、芸人を目指そうと思っていた。

しかし、いざ実際に高校に入るとあまり友達ができず、どんどん暗くなっていったし、K君はビジュアル系のコピーバンドに夢中になり、いつのまにかその夢は忘れ去られてしまった。二人とも冗談半分で目指していた感じがあったから当然とも思えるが、実は僕は割とまじめに芸人になりたいと思っていた。事に小学校高学年の頃はかなりの熱を持っていた。しかし、中学からはそれに向けての努力はほとんどしていなかったし、誰かに胸を張って夢を持っているとは言えなかったので、やはりそんな生温い夢は消えてしまって当然である。

歌を歌い始めて、プロの芸人さん達と会う機会ができたが、皆さん本当に素晴らしい。僕のような半端な気持ちの者では到底、到達できなかっただろう。

ただ一つだけ。

その頃の僕の気持ちを残しているものがある。

それは、今、僕が使っているサインである。

芸人になれると信じて疑わなかった小6の頃に考えた恥ずかしいサインを今も使っている。

ただ、サインだけが化石のように昔の僕の熱に浮かされた心を今に伝えている。

初心を忘れないように。とかではない。











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