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#28 心理検査に関する疑問

 中学校の就学相談の資料として用いられる心理検査にはWISC-IVが用いられることが多いです。
しかし、WISC-IVは適用年齢が5〜16歳程度となっており、児童によっては計測ができない場合があります。
その場合、ビネー式やK式といった適用年齢がより低いものが用いられることもあります。
これらの検査は数値的な結果だけでなく、所見が記載されており、総合的に判断されるものです。

 しかしながら、心理検査の結果だけで児童の能力を知ることは難しいです。
例えば、ある児童AがWISC-IVで全検査IQが65という結果だったとします(加えて、各項目においても全般的に非常に低い数値だとします)。
軽度知的障害の基準はIQ50〜69とされており、IQ65であれば軽度知的障害に該当する数値です。
しかし、児童AのIQが65でも、通常の会話が成立し、学力は平均以上であるとしたらどうでしょうか。これは実際にあり得ることです。
逆に、IQ90程度であっても、通常の会話が成り立たず、学力が非常に低い水準という児童もいます(ただし、この場合は各項目の凸凹が大きい事が多いように感じます)。
これは児童のコンディションや特性、心理士の技術的要因も挙げられますが、それだけ大きな差があるにも関わらず、片や軽度知的障害に該当、もう一方は平均であるという摩訶不思議な現象が起こります。
これがどれだけの頻度かは、膨大なサンプル数がある訳ではないので十分な説明ができませんが、度々見かけるものです。

 スクールカウンセラーや大学教員に心理検査について質問をしてみると、検査結果についての疑問はやはりあるとの事でした。
この検査結果に基づいて就学相談や各支援に繋げられていくにも関わらず、支援者がその結果で判断することで誤った支援に繋がってしまうのではないかという気持ちもあります。
例えば、「彼(彼女)の知能は、(実年齢が12歳にも関わらず)7〜8歳程度との結果が出たから、精神年齢相応の指導が必要なのだ」という考えてしまう事に繋がってしまいかねないということです。
もちろん、実際の児童を見て、保護者や周囲の人からどのような困難さがあるかを聞き取り、総合的に判断して支援を行っていくことが原則ですし、心理検査の結果で指導内容を決定することは基本的にないものであると思います。
では、心理検査はどこまで判断材料に用いれば良いのか。何も参考にならないのであれば、この検査結果に何の意味があるのか。

そういった疑問は今も尽きません。


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