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口をついて出た言葉は「なるほど」だった

乳がんは世界的にも罹患する女性が多いため、
研究も進み、治療方法も比較的確立している。
最初はマンモグラフィで診断し、乳がん疑いがあると細胞診断が行われ、
がんが確定するとそれから2週間ほどかけて「サブタイプ」を調べる。

マンモグラフィの撮影をしたその日に「9割がんです」と言われ、
その2週間後にがんが確定しても、私は「がーん」とはならなかった。
(知人に、「子宮頚がんの転移でステージ4です」と言われて「がーん」と   言ったのに医師も看護師も笑わなかった、と憤慨している猛者がいるが、
 患者としてそれなりに緊張して座っていた私にはさすがにその余裕はなかった)

ただ、がんのサブタイプを聞きに行って
「トリプルネガティブです」
と言われた、この時はちょっとショックだった。
事前に医師にすすめられた「患者のための乳がんガイドブック」を読んでいたから多少の知識があった。
乳がんにはホルモン剤が効く・効かない、分子標的薬が効く・効かないでサブタイプ分類され、そのタイプによって治療方法が異なる。
7割近い人がかかる「ルミナルA」「ルミナルB」はホルモン剤が効き、比較的予後も良い。2割が「HAR2陽性」、最近開発された分子標的薬が効く。ただ1割のサブタイプ「トリプルネガティブ」は、ホルモン剤が効かず、分子標的薬も効かない。抗がん剤だけしか効かないために治療方法があまり選べず、再発の可能性も3年以内と早い。そこに「予後不良」という文字があったことを覚えていたのだ。
「トリプルネガティブです」
という言葉の後に、心の中で繰り返すように「トリプルネガティブ、予後不良」とつぶやいていた。

クリニックの紹介状を持って、手術・治療をする病院に行く。
それと同時に病院でセカンドオピニオンの紹介状も書いてもらう。
セカンドオピニオン30分2万円也、
さすがに手慣れている感じで丁寧ながらも端的に説明してくれる。
で、医師は最後にこう言った。
「う〜ん、左側もちょっと気になりますね。これも早めに細胞診してもらった方がいいですよ。僕もそのように書いておきます」

次の日に病院に行き、左側の細胞診も行ってもらう。
その間に、手術の準備のためのレントゲンやら、MRIやらの検査があって。
そのいろいろな結果が出た。
「左もがんでした。ルミナルAです。
 そしてMRIの画像を見てもらうとわかりますが、
 がんの固まりだけでなく、小さいのが両胸ともに点在していてね。
 これも取ってしまった方がいいと思うので、
 両側全摘になるとと思います」

一瞬、息を飲んだ後、口から出てきた言葉は
「なるほど」だった。
・・・オヤジか、私は。

1.5センチだということで早期発見だし、楽観的に考えていたけれど。
わたしは女性の11人に1人の確率で乳がんになり、
その中の1割の確率のトリプルネガティブであり、
乳がんの人の1〜2%の同時性両側乳がんだった〜。
1.5センチの小さながんだから部分切除でいけるのかなぁ、と思っていたら
乳房全摘、それも両側。

乳がんかも、と言われてからすでに1ヶ月半がたっている。私にとっては「乳がんプロジェクト」発動中だからね。
情報を集めて、状況を把握して、決断して、調整して、実行していく。
これ、仕事と同じですから。
仕事モードの受け答えになるのよね。
確かに画像では小さな点がたくさんあって、それを取り切らないとがんが治らないわけなのだから、取るしかないだろう。
もちろん、がんを治療しない選択ならば何もしなくてよいが、
治療するなら徹底的にやらないと意味がない。

でもねぇ、なんだかどんどん悪い情報が出てくるっていうのもね。

46歳の時に子宮筋腫で子宮も全摘しているから、
今回の手術でおっぱいふたつを取ってしまったら、
いわゆる女性としての記号を全部失うことになる。
これってよくよく考えると、なんだか大変なことだなぁ。

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