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切削油BIZ

金属加工の様々な部品を作る時に、かなりの割合で切削油を使います。「切削油を変えるのは大変で…」確かに、その通りかもしれません。しかし切削油は日々進化しており、それを取りこぼしているとライバル会社に出し抜かれてしまうかもしれません。水溶性であれば、年に1・2回は切削油の入替え作業をすると思いますが、そのタイミングで費用対効果の高い切削油に変えてみてはいかがでしょうか。
このページはお役に立つページを目指しておりますが、保証等につきましては販売元へご確認下さい。研究レベルの知見とは必ずしも一致していない場合もございますが、ご了承願います。

※ご満足頂けましたら、最後の所にあります支援を頂けますと非常に嬉しいです!!

<切削油の選定>**

1、水溶性切削油

水溶性切削油とは、水に対して5~15%の原液を加え攪拌する事によって混ざり合わせた混合液を作り、金属加工をする際に工具と被削材の間に入り込み潤滑性や冷却性等によって円滑に加工をする為のものである。
イメージとしては顔のひげをT字カミソリで剃る際にジェルやムースをつけます。これが無いとおそらく肌を余分に傷つけてしまいます。目的の加工を正確に行うためには重要な役わりです。

a.水溶性切削油の種類

水溶性切削油は引火の危険が無い為、導入率はかなり高くなってきております。ここでおおまかな種類を表にまとめます。 

水溶性切削油分類表

この3種類は主に油の配合率で分けられており、
エマルジョン>ソリュブル>ソリューションの順で油が多く入っております。ざっくり言うと乳白色が濃いほど油分が多い液です。しかし、細かく見ていくと各メーカーごとに線引きの違いがある為皆さんが混乱するところです。また、それらを組み合わせた中間ネームのようなものも存在します。混乱したときは、上の表を基本として考えればわかりやすいと思います。各タイプの解説をしていきます。

[エマルジョン]
油分が一番多く含まれており、潤滑加工性が一番高いタイプです。低速加工でも油膜が機能するためタップ加工で工具が折れてしまう方はこれを選びましょう。タッピングトルクテストで一番高性能な結果がでます。色は乳白色で極圧添加剤を含むタイプであれば、難削材も加工できます。一方、極圧添加剤の1つである硫黄は銅合金を黒く変色させてしまうので、選定の分かれ目になります。難削材重視でいくか、非鉄金属重視でいくかオールマイティーにノーマルタイプでいくかという選択になります。

[ソリュブル]
油分が二番目に多く含まれておりますが、半透明タイプなので加工点が可視化しやすく好まれる方が増えております。洗浄性が良いタイプもソリュブルに多いです。一方、加工性はエマルジョンよりは一般的に劣ります。管理のやり易さから導入する方が増えているということですね。バリバリと削りたい!という場合には不向きですが、上手に使い分けられる方は選択の一つです。また、細かい話をすると半透明の作り方がメーカーによって違いがあるように感じます。単純に油分を少なくして作り上げている半透明の場合や、界面活性剤を多くして、油の分散性を高くして半透明に仕上げているメーカーなど様々です。この辺が、各メーカーの腕の見せ所といった所でしょうか。

[ソリューション]
ほとんどが油分ゼロのタイプになります。主に添加剤で加工性を作り上げております。ケミカルソリューションと呼ばれる場合もあります。切削性よりも洗浄性を重視して研削液として使われる事が多いのですが、最近では高性能ソリューションも出てきており条件をうまく合わせていけば軽切削をできる製品も出てきています。泡立ちにくいのも特徴です。
参照:全工油NET{水溶性切削油JIS分類}

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b.水溶性切削油の腐敗対策** 

腐敗対策での重要なポイントですが結論からいきます。
①液濃度管理②浮上油を取る③定期的に液交換と切子を取る
この3点が特に大事です。
水溶性切削油は火災の危険がない為、人気がありますが弱点として腐敗します。その為液管理が必要で、まずは濃度が大事です。濃度が一定以上であればpHが維持されバクテリアが住みにくい環境になります。逆に言うと、濃度が低ければバクテリアの増殖するのに最適な環境になります。油をエサとして、他の有効成分を分解し液を劣化させるバクテリアを増やしてはいけません。腐敗臭もバクテリアの副産物になります。バクテリアは嫌気性菌と呼ばれエサと一定の温度(40度弱)の環境下で酸素が減ってくると、爆発的に増殖していきます。浮上油を取るのは油膜が液表面にあると液が酸素不足となってしまう為です。バクテリアの増殖は酢の醸造とよく似ていて、副産物として酸を出します。pHを測るのはその為です。腐敗してくるとpHが酸性に傾くので、腐敗進行の指標になります。逆に濃度が薄すぎる場合を考えてみましょう。水溶性切削油は、元々90%近くが水ですので濃度が薄ければ本当に水に性能が近寄ります。逆に言うと10%前後で性能を出していかねばならないため、1%の差が結構大きく性能に出てきます。私の肌感覚でいうと、「濃度基準」…5%薄めの限界・8%標準・10%若干濃いめ・15%濃いめ各メーカーごとにも若干の違いはありますが、ざっくりこんな感じでしょう。
≪濃度の計算方法≫原液(L)÷水の量(L)×100=濃度(%) 
計算例:原液10L÷水200L×100=濃度5% 
ちなみに、濃すぎると泡立ちと手荒れがしやすくなります。薄すぎると腐敗と加工性低下となります。ちょうど良いブレンドにするには、濃度計は必需品です。この「ちょうど良い」が作れる方と作れない方の「差」が生まれているように感じます。ちょっと面倒かもしれませんが、管理を見直してみてはいかがでしょうか。表を機械の横に張り付けておき、週に1度濃度を測って記入するだけでも違うと思います。

2、油性切削油(不水溶性切削油)

油性切削油の選定ポイントは
a.粘度 b.添加剤(銅板活性度と塩素) c.危険物分類
それでは解説していきます。

a.粘度

粘度は文字の通りですが粘り気です。数字が大きくなるほどドロドロになり、数字が小さいほどサラサラになります。粘度が大きいほど潤滑性は増しますが、粘性抵抗が上がります。粘度が小さいほど潤滑性は下がりますが、粘性抵抗は下がります。要は求められている性能が何か?という所ですが、実例でいうと最近の高速回転軸のマシニングセンタでは低粘度が主流となります。自動盤の固定ブッシュ等には高粘度が向いております。粘度は洗浄性や冷却性にも関連してきます。粘度が小さいほうが、洗浄性が高くなり冷却性も増します。サラサラであれば汚れも流れやすくなるし、液体の流動性も高く熱を奪い易く、加工点まで液体が到達しやすくなります。粘度が大きいほうが良い場合もあります。イメージとしては物凄く大きな歯車を潤滑する場合に、サラサラな油では圧力で単純に油膜が切れてしまいます。油膜が切れるとは油が無い状態をいうので当然潤滑する事はできません。そこで登場するのが極圧添加剤です。これは次の所で解説します。

b.添加剤(銅板活性度と塩素)

各メーカーのパンフレットには銅板活性度や銅合金加工性でのっており、銅合金の変色や腐食を示す表示となります。JIS等級で銅板活性度はN1種~N4種にわかれており、N4種に近づくほど銅合金の加工には向いておりません。

参照:全工油NET 水溶性と同じ上記リンク先へ{油性切削油JIS分類(油性切削油=不水溶性切削油}}

これらは主に硫黄の配合比率で分かれており、硫黄と銅は反応しやすい為銅合金の加工の場合は避けたほうが良いのです。しかし、耐熱鋼を加工する場合には硫黄は有効な加工添加剤ですので、どちらを軸に考えるのか判断が必要な所です。塩素については、徐々に使用が減ってきております。2020年3月の現時点で使用していけないというルールは私の知る限りはないようですが、廃棄する際には通常の廃棄とは別処理となります。また、濃度も大事な要素ですので後から塩素だけを添加する事はあまりお勧めできません。

c.危険物分類 

危険物分類は消防法や各自治体への申請にもかかわってきますので、非常に重要です。しかし、この分野に積極的に取り組んでいらっしゃる方は少ないように見受けられます。例えば後からこれらの問題が見つかった場合は、建物の構造変更が求められる場合があり、非常にコストがかかります。危険物の貯蔵量は最初の計画の段階から組み込むほうが良いでしょう。切削油は主に潤滑油・重油・灯油・植物油・その他に分類される事が多く、今挙げたこれらの分類だけでも各分類によって貯蔵可能な容量(指定数量)は変わってきます。ご自身で使っていらっしゃる切削油及び潤滑油の危険物分類はSDSに記載されておりますので、ご確認下さい。

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