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◇特集「ゆったり心身を整える」

*心と身体にもたらす禅の効果
~代謝を上げて疲れにくい身体に~

全国で座禅の会を主宰している密教的座禅の会(ニュースタイル禅)。
今回は講師の白石博文先生に、座禅と運動やその効果についてお話を伺いました。

                      聞き手:角村清隆
                      話し手:宗教家 白石博文

特集 お寺

自力と他力で潜在能力を引き出す

―まずはニュースタイル禅というのはどのようなものかお聞かせ下さい。何がニュースタイルなのでしょうか?―

白石 従来の座禅は座って心を落ち着けるということで、その辺はオールドスタイルもニュースタイルも同じなんですけれど、これまでの座禅は自分と向き合うということに力点が置かれています。ニュースタイル禅(密教的座禅)は自分と向き合うというだけではなくて、自力以外の他力といった神仏の存在を、祈ることによって感じて、自分に潜在している能力を引き出すようにする形です。

 だから、座禅の場合は自力で無になろう無になろうとする。そして、乱れるとパシッと叩かれる。密教的座禅の場合は集中して真剣に祈るということが大きな違いだと思います。

 祈るということは、祈る対象があるわけで、神様とか、菩薩様とか、そういう高度な存在の話になると宗教の話になるので、興味がある方は実際に会に来て質問して下されば良いかと思います。

―無になるのと、祈るのでは、大分違いますね。―

白石 無になろう無になろうと意識してしまって、そこから何か得ようとしてもなかなか難しいですよ。それでも心が落ち着けば、まだ良いのかもしれませんが、却って雑念ばかりが湧いてくる方が多いようです。修行された僧侶の方でもなかなか悟りの境地にまでは行けなくて、やはり、自力と併せて他力も借りながらやって行くのが良いのです。

 他力を感じるのに一番何が良いかと言うと、祈ることですね。結果が出たり、出なかったりすることで分かりやすく、感じやすいから。そこで、祈願するというのが密教的座禅の最初の段階に入って来るのです。

集中して座ることで整う

―ゆったりとした運動がテーマなのですが、禅と運動についてはどのように捉えれば良いでしょうか?―

白石 今回はテーマが運動ということなので、では座禅は何で運動なのかと。どうしても山野を跋渉(ばっしょう)するとか、滝に打たれるとかいう動的な激しい動きを運動として捉えがちなのかもしれないけれど、座禅のように姿勢を保持するとか、呼吸法を身に付けて代謝を上げるようなことも、静的な動きとしての運動に入ります。まさに、ゆったりとした運動。

 スポーツなどとはイメージがかけ離れているかも知れないけれど、代謝を上げるということはとても大切で、基礎代謝が上がると脂肪が燃えやすくなる。動的な激しい運動ではないにしても、楽な姿勢を保持する体を作り上げて行くというのは体幹を強くすることにもなります。

―他に密教的な座禅をする効果はありますか?―

白石 効果はいろいろあると思うのですが、例えば、深く腹式呼吸をすることによって、のびのびとした気持になれる。呼吸が整ってくると心が安定する。心が安定してくると、積極的になれたりだとか、毎日の生活に張りが出てきたりだとか、何事にもやる気になれるというのも大きいですね。他の運動をしていても三日坊主で続かないという人がいるけど、心を安定させることで、いろいろなことをコツコツ継続させて行くこともできるから。呼吸法を身に付けることによって日常生活のいろいろなことに役に立つと思います。疲れにくい心と身体を持てれば、生活の質も上がりますね。

 ランニングや筋トレをしてダイエットをしている人も結構います。座禅でダイエットができるかというと、ちょっと発想が逆でしょうか。私の感覚では、密教的な座禅をするととても気持がいい。心も落ち着くし、安定する。そこにはまって行く態勢というか、姿勢があって、やはり、集中して心を落ち着かせてやって行くのに、正座が楽なんですよね。たぶん、皆さんは座りなれてないし、正座というのは膝が痛いとか、足が痺れるという嫌なイメージがあると思うんだけれども、これに慣れてきて、本当に集中しようと思うと、正座している姿勢というのが一番集中しやすくて楽。

 これが動機となるんですよね。座禅をしてスリムになるというよりは、どうしたら集中して座れるかなと考える。そうすると、余分なお肉がついて、水もガブガブ飲んで、ぼてっとした体で集中しようと思っても、やはり、集中力は散漫になる。そこで正しい食生活をするとそれなりの体型になってくる。アメリカとかに行くとすごい太った人がいるけれど、日本で座禅をしようという人に、そこまでの人はあまりいないです。

 意識が変わってきて体質が改善されるし、代謝が上がって体質が変わることによって心も安定してくる。だから、ダイエットを目的にやるというよりは、集中したり、心の安定を追及して行くと、自然とそれなりの体型になっていきます。逆に、体質が改善されると、心の安定や集中力も身に付けやすい。こういった相乗効果がありますね。

疲れた内臓をリセットする

―他に何か実践していますか? ―

白石 私の場合は月に数回の密教的座禅の他に、月に一度、完全断食をしています。もう何十年もやっているから、これまでに数百回はやっています。年に12回やったとして、10年で120回。その日は一切食べないし、水分も口にしないんだけど体調不良になることはない。食欲が湧いてくることもあるんだけれども、克己心を養うためにも続けています。

 断食が続けられるというのも、密教的な座禅をやっている効果が大きいです。動じないというか、大きな安定した心でいられる。欲につぶされることもなく、のびのびとリラックスをした一日を終えられて、すっきりします。断食に興味がある方とか結構いるんじゃないでしょうか。

 でもこれはダイエットではないです。次の日に水を飲むと体重は元に戻ってしまいますからね。働きっぱなしの疲れた内臓を休めてリセットする。休息による疲労回復と代謝が上がることが実感できます。これは素人が勝手に真似をするのはダメで、指導者のアドバイスを受けてやらなければならないですね。

 ダイエットってきついものですよ。脂肪を1㎏燃やすのに、7200キロカロリー必要だと言われています。基礎代謝が1600キロカロリーとして、4、5日完全断食しないと脂肪は1㎏燃えない計算になる。これは危険で、体も壊してしまうので、極論の滅茶苦茶な話ですよ。例えば毎日100キロカロリーぐらいマイナスしたとして、2ヵ月半で1㎏痩せる。これでも1年で5㎏ぐらい痩せるのだからハイペースだと思います。

 ダイエットの話をましたが、要するにコツコツ継続して行くことが心身を整えるには大切で、私は密教的座禅を20歳ぐらいから月に数回、30年間続けてやっています。コツコツと何十年も無理なく続けて行くのが大切です。お蔭で心身ともに健康に生活できています。

密教的座禅の会

密教的座禅の会(New Style Zen)
https://www.newstylezen.com

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