見出し画像

◇投稿「国内でもテクノロジー犯罪被害者は増えている」

在キューバ米国大使館員への音響兵器・
マイクロ波兵器攻撃? の報道を受けて

石橋 輝勝 
特定非営利活動法人テクノロジー犯罪被害ネットワーク理事長

 米国務省は、キューバにある米国大使館の職員と家族十数名が異常な体調不良を訴えて帰国し、治療していたことを発表しました(2017年8月10日)。その体調不良は、難聴、めまい、吐き気、鼻血、頭痛、不眠症などで、中には大音量の虫の鳴き声や金属で床をこする音などの現象も報道されました。

 症状を訴えた人は、その後26名となり、カナダ大使館員や家族5名も同様の症状を訴えていたことが発表されました。昨年には中国・広東省広州市にある米総領事館職員11名にも飛び火して、国を越えて被害者が発生し、全体では40名を越える状況になっています。その要因として、当初は音響兵器が取り沙汰(ざた)され、その後はマイクロ波兵器の使用が浮上して来ています。


テクノロジー犯罪と嫌がらせ犯罪が多発


 これらの報道を私が代表理事を務めるNPOテクノロジー犯罪被害ネットワークでは注目してまいりました。それは、同様の症状を犯罪被害として20年来訴えて来たからです。当NPOでは、これを「テクノロジー犯罪」と「嫌がらせ犯罪」に分けて説明するようにしています。

「テクノロジー犯罪」は、遠隔から見えない媒体(電磁波や超音波など)を用いて、特定個人をピンポイントで捉えて攻撃し、人間のあらゆる機能をコントロールする犯罪です。

「嫌がらせ犯罪」は、特定個人に対し、組織的・継続的に様々な嫌がらせを働く犯罪を意味しています。

 今回後者については、頻繁な家宅侵入や車への侵入の報告はありますが、注目度は低い状況です。


音響兵器とマイクロ波兵器


 キューバで起きた事件で表面化した音響兵器とマイクロ波兵器をネット上で検索すると、大音量を発して暴徒を鎮圧する長距離音響発生装置LARD(Long Range Acoustic Device)や、照射内の人にしか聞こえないマイクロ波パルスを発するMEDUSA(Mob Excess Deterrent Using Silent Audio)、皮膚表面に熱感を生じさせるADS (Active Denial System)などが非殺傷兵器として紹介されていることが分かります。

 どれも戦車や装甲車ほどの大きさで、監視が厳しい大使館周辺で使えるものでないことは明らかです。報道では、大音量を聞いて外を見ると、バンタイプの車が走り去るのが目撃されたとの報告もあり、車に収納できるサイズに小型化されていることが考えられます。

諜報活動におけるレーダーと
マイクロ波兵器の使用

 当NPOテクノロジー犯罪被害ネットワークでは、今回の事例を最もよく説明してくれる二人の専門家の証言を紹介しています。

 一人は元諜報部員カール・クラーク氏です。氏は米国CIAやイスラエルのモサドで諜報部員として活動した経歴があり、ドイツの雑誌でその活動の一端を明らかにしています。それによると次のようなことが行なわれていたことが分かります。


① レーダー・衛星・基地局・無料のコンピュータプログラムを使ってターゲットを終日追跡。
② レーダーでターゲットの位置を正確に把握してマイクロ波兵器で攻撃。
③ 前記攻撃でターゲットがどのような状態に陥っているか把握できるシステムの使用。
④ レーダーとマイクロ波兵器の使用は20年ほど前には諜報活動で常態化。
⑤ マイクロ波兵器  で、痕跡を残さ  ず、熱・体内焼付け感・痛み・吐き気・恐れ・攻撃性・神経過敏・健忘性・精神疾患を誘発。
⑥ ラジオからターゲットへの呼び掛け。
⑦ 行動についてコメントする音声をターゲットだけに聞こえるように送信。
⑧ 家に侵入して、物の移動と紛失、コンピュータからデータの削除。
⑨ 盗聴、尾行、ターゲットの目に留めて精神を混乱させる演技。


 一般には知らされていない諜報活動の実態を公にしてくれた氏の証言は重要です。特に、レーダーとマイクロ波兵器の使用、それによって誘発される症状から、マイクロ波兵器が次元を異にする兵器であることが分かります。

軍事開発されるマイクロ波兵器の実態

 二人目の証言者は元英国海軍所属マイクロ波の専門家バリー・トゥロワー氏です。氏は英国海軍でマイクロ波を使った戦略の構築に携わって、その面で各国の開発状況を調査できる立場にもありました。そのトゥロワー氏が、マイクロ波の利用を次のように説明しています。


① マイクロ波パルスの生体への影響(マイクロ波をどのようにパルス加工して発信したら人間にどのような影響が現れるかということ)は1976年に新たな実験を一切必要としないほど研究し尽くされていた。
② マイクロ波兵器で、精神疾患・癌(がん)・心臓発作等を、自然か人為か分からないように誘発でき、病気の進行状況も選択できる。
③ マイクロ波兵器による疾病誘発攻撃はターゲットの前の家を借りるだけでできる。
④ スーパートランスミッターの利用で、マイクロ波パルスを電離層で反射させることで、国境を越えて使用できる。
⑤ マイクロ波兵器で個人の脳をターゲットにして音声幻覚に陥らせることができる。
⑥ 米国防情報局がマイクロ波兵器について西側各国に秘するように促した。
⑦ 政府が資金を拠出して当人に知らせることなく人体実験を行っていた。

 氏の証言から、マイクロ波兵器が軍事開発されていた実態がよく分かって来ます。そして、なぜそれが一般に知らされていないかも理解できるようになります。氏は、マイクロ波兵器がステルス兵器として、政府にとって都合の悪い人に使われていたことも証言しています。

国家を背景とする諜報活動として起きる事件

 二人の専門家の証言から、キューバでの事件は、どこかの国の諜報部員がマイクロ波兵器を使って行なったことが濃厚になってまいります。対象が米国とカナダの大使館員と家族ということで、両国政府が捜査に乗り出し、米国では医者の見解が発表されています。

 21名を診察した米国医療チームは、事故や殴られるなどの衝撃によって生じる脳機能障害が、その経験がないにも関わらず、当該被害者に認められたことを発表しました。


2000名を越える被害者が日本に存在する


 皆さんに知ってほしいことは、日本でも同様の事件が全国規模で発生していて、被害者が2000名を越えていることです。しかも日本では、無辜(むこ)の一般市民が標的となっているのです。

 各地に点在する一般市民ということで、政府は何の対応もしていないのです。日本の被害者は、キューバの事件とは比べものにならないほど多様で深刻な被害を受けていることは、当NPOの調査から明らかです。

7p上段の表 


 しかも、今回の事件では大きく取り上げられていない「嫌がらせ犯罪」もそれに伴っているのです。

 諜報活動と思われる手法を使った犯罪が、全国的な規模で発生している実態を当NPOは訴え続けて来ました。今回の事件を契機として、日本の被害者にも目が向けられることを願って止みません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?